38-4 王都急襲(2)
バウロ達は王都の西の門前に到着した。 スウゲンは王都の東門には軍勢を送らなかった。 包囲戦をするには兵が足りないからだった。 しかしすぐには攻撃にかからなかった。 矢が届かない距離を保ちながら様子を伺うことにしたのだ。
城壁の上でフーリエとカムラには違和感があった。
「なぜ攻撃してこない?」とフーリエ。
「まるで何かを待っているかのようですね」とカムラ。 そう言った時、レーギアの方で喧騒が起こった。 二人は異変に気付き、耳を澄ませた。
「何だ、何が起きている?」とフーリエ。
「戦いのようですが・・・・」カムラがそう言うと、フーリエは何か気付いたように言った。
「そうか、奴らはこれを待っていたのだ。 まずい、敵が侵入しているぞ。 奴らの狙いは天聖球だ」
「何ですって!」
「カムラ、ここをたのむ。 俺はレーギアに向う」 そう言うとフーリエは、すでに城壁の上を走り出していた。
俺達はレーギアの中庭で戦闘になっていた。 守備兵の数は3百人ぐらいで、グルサンの兵達に押されていた。 その時である。 庭の一角にゲートが開くとムギン王が出てきた。
「何だ、もう王都内にまで攻め込まれているのか?」とムギンはそう言うと、寄せ手の中に俺を見つけた。
「緑の王よ、また会ったな。 今回は前の復讐か? だが今回は負けんぞ」 そう言うと俺の前に立ちはだかった。
「そうか、だが私も負ける訳にはいかない」 俺もそう言って構えた。 するとアドルが前に進み出ると言った。
「カケル様、ここは俺にやらせてもらえますか」
「何だお前は? サムライか? お前ごときがしゃしゃり出るところではないぞ」
「いいえ、これは我々マブル族の問題です。 あなたは王にも関わらずマブル族の名誉を汚した。 俺にはそれが許せない」 アドルは食ってかからん勢いだった。 ムギンはアドルのただ者ではない雰囲気に、何か気付いたように言った。
「お前はもしかしたら、先の戦いでザンバを討った者か?」
「そうだ」
「・・・。 そうか、良いだろう。 相手してやる」
「よろしいですね、カケル様」
「良いだろう」
回りの兵達は、両軍とも戦いを止めて、遠巻きに二人の戦いを見守った。 アドルは、シャツを破り捨てると、完全獣化した。 12王相手には全力で当たらなければ、勝てないと分かっていたからだろう。 ムギンも完全獣化し、金狼の姿になった。
「名を聞いておこう」
「グルサンの族長ゾーリンが息子、アドル・ブレーグ」
「アドルか良い名だ。 では、いくぞ」
二頭の獣の戦いは熾烈を極めた。 アドルの白い体は血で赤く染まっていた。 だがそれはムギンも一緒だった。 ムギンが俊敏な動きと鋭い牙で攻撃すれば、アドルは太い腕と鋭い爪で引き裂いた。 戦いは際限なく続くかと思われた。
「本当に、やるな。 ザンバがやられたのも頷ける」とムギン。
「いえ、ムギン王こそ、やはり強い。 でも負ける訳にはいかない」とアドル。
「では、そろそろ決着を着けようか」 ムギンはそう言うと、呼吸を整えた。 すると体が一回り大きくなったように見えた。 そして全身が金色のオーラで包まれた。 何か大技で決めようとしているのは明らかだった。 俺は黙って見ているしかなかった。
アドルも最後の賭けに出た。 アドルの全身は青いオーラに包まれたかと思うと、全身を細かな稲妻が駆け巡っていた。 両者は大きく咆哮すると、同時に攻撃した。 ムギンの炎に包まれた右前腕が、アドルの顔面を襲ったがアドルは間一髪でかわした。 アドルの頬の毛が焼けた匂いがした。 アドルはかまわずそのまま一歩踏み込み、ムギンの顔面に右拳を叩き込んだ。 それと同時に雷撃もダメ押しで加えた。 ムギンは20メートルほど後方に吹き飛んで倒れた。 ムギンはしばらく仰向けに倒れたまま起き上がらなかった。 誰もが勝負が着いたと思った。
アドルが静かにムギンに近づくと、ムギンは急に立ち上がり、アドルののど元に噛みつこうとした。 次の瞬間、アドルのナイフのように伸びた鋭い爪が、ムギンの胸を貫いた。




