38-2 激突
三日後、橙の軍勢5万5千と緑のレギオンとレッドローズの連合軍8万は、王都の南東約10キロの丘陵地帯でぶつかった。 レッドローズは左側に川が流れる丘の上に陣を設けた。 セシウスはそこから1キロほど北の丘に布陣した。 ユウキはレッドローズが布陣する前に地割れを起こし、即席の空堀を造った。 レギオンの布陣する丘も同様にした。 橙の軍勢は各1万のタイロンとアストリア兵を前面に出し、その後ろにムギンの中央軍1万5千、右翼にアロンザの1万、左翼にクロンの1万だった。
タイロンとアストリアの兵達は空堀のある前面から攻めるしかなかった。 南側には川があり、空堀を避けて北側から攻めようとすればレギオンと両方から挟み撃ちになるためだ。 アストリアとタイロンの兵達は後ろからせき立てられ、空堀の前で躊躇していると、丘の上から一斉に矢を射かけられた。 仕方なく空堀に降りて渡ろうとすると、川側の堰を切られ川の水が流れ込み多くの兵が溺れた。
クロンは左翼の1万を率いて北側に回り込み、レギオンの布陣する丘を北側から攻撃しようとした。 それを察知したセシウスは丘の上から、クロンの部隊にバズーカを撃たせ、更に矢を射かけさせた。
アロンザは業を煮やし、自分の右翼の軍を率いてアンドレアスの布陣する丘を北側から攻撃するべく回り込んだ。
それを見ていたアンドレアスは、ゴーセルに命じた。
「ゴーセル、出番だ。 暴れて良いぞ」
「さーて、野郎ども、行くぞ」 ゴーセルは部下にそう言うと1万の兵を連れて丘を降った。 それに合わせて、北の丘からもゲランが5千の兵を率いて攻め降った。 戦いは拮抗した展開となった。 ゴーセル達は徹底して橙の兵に対して1対1では戦わなかった。 獣人兵には敏捷性でもパワーでも敵わなかったからである。 ゲラン達に指導された複数の兵による防御と攻撃の連携攻撃によって、着実に敵兵を削っていった。
「クソッ、何をもたついているのだ」 ムギンは膠着した戦況に苛立った。 その時、橙の王都にいるはずのカムラから念話が入った。
「ムギン様、一大事です。 王都が攻撃を受けております」
「何だと、敵は?」 ムギンは大いに驚き、騎竜から落ちそうになった。
「藍と黒、青、それにエルビン族などの混成部隊です。 その数約2万5千です」
「しまった、本命は王都か。 分かったすぐに戻る、堅く守れ」 ムギンは全てを理解した。
「クロン、余は王都に戻る。 ここの指揮はお前に任せる」 ムギンはクロンに念話で話しかけた。 クロンも驚いた。
「ムギン様、どうなされたのですか?」
「王都が攻撃を受けている。 こちらは囮だ」
「何ですと、承知いたしました」
ムギンは騎竜を返し軍の後方に移動すると、ゲートを開けて異空間の輪の中に消えて行った。




