35-3 ソドンの攻防(2)
ユウキは、兵数や装備などの現状と敵の情報も聞いた後、あらためて一人で各所を見て回った。 ソドンは基本的に3つの山が三角形をなし、稜線を利用した通路でお互いに行き来出来るようになっていた。 その稜線は通路であると同時に守りの城壁でもあった。 それぞれの砦に通じる道をお互いに途中で攻撃出来るようになっており、まるで全て計算されて造られているかのようであった。 ユウキは2時間ほどして戻ってきた。
「素晴らしい、実に素晴らしい。 まさに要塞ですね。 これなら敵が5万で攻めて来てもおちませんよ」とユウキ。
「では、その素晴らしい考えを聞こうか」アンドレアスはテーブルに要塞の図面を広げた。 ユウキは図面に近寄った。
「まず兵の配置ですが、弓兵はここと、ここと、ここ。 歩兵は・・・・」 ユウキは淀みなく自分の策を説明した。
「すっげえー。 面白いなそれ」とゴーセル。
「うむ、それならいけるかも知れない」とグラントもうなった。
「それからここが少し弱いと思われますので、ここをこう補強してください」
「分かった」とケビン。
「取りあえずはこんなところでしょうか。 幾つか他に案もありますが、敵の出方に合わせましょう。 動いたら腹が減りましたね」 ユウキは鳴っている腹を押さえた。
「何か用意させよう。 食堂に案内してやってくれ」 アンドレアスは部下に命じてユウキを案内させた。
「どうだ。 ユウキは?」とアンドレアス。
「さすがですね。 少し見ただけで、ここの長所と弱点を見抜いてしまった。 だけど、そう頭で考えるようにうまくいきますかね」とケビン。
「そうか・・・」 アンドレアスは意味深な笑みを浮かべた。
「だが、彼の言うことはもっともで、現状では最善の策だと思う」とグラント。
「確かに、それは認めます」とケビン。
「ではとにかく、彼の言うとおりにやってみると言うことで良いかな」とアンドレアス。
「はい」
5日後、ボアンガが率いる1万の軍勢が、要塞の麓に到着した。 翌日から3方から攻撃が開始されたが、アンドレアス達は鉄壁の守りで門を突破させなかった。 橙の軍勢は次第に兵を削られて3日後には7千まで兵が減っていた。 ユウキは戦いが始まってからは、一切口を出さずに見ているだけだった。
三日目の夜
「全然負ける気がしないですね」とゴーセル。
「だが敵もなかなか諦めようとしないな」とケビン。
「では、ここらでケリを着けますか」とユウキ。
「策があるのですか?」とケビン。 ユウキは頷いた。
「皆さんはアンドレアスさんの本気を見たことがありますか?」
「ない。 是非、団長の本気見てみたいね」とゴーセル。
「まさか、私に・・・」
「そのまさかです。 明日、アンドレアスさんが出ていけば、向こうも大将のサムライが出てこざるを得なくなります。 出てこなかったら、兵達に臆病者と見られてしまうからです」
「ふっ、まあ良いだろう。 私もしばらく暴れていないのでストレスが溜まっていたところだ」
「それって、軍師としてはあまりお勧め出来ない策なのでは? 敵のサムライと言えばかなり強いと思われる。 イチかバチかみたいな策は・・」とケビン。
「アンドレアスさんが負けるなんて有り得ない。 少なくともサムライ程度にはね」
「買いかぶり過ぎじゃないか」とアンドレアス。
「俺もあんたが負けるとは思ってはいない」とグラント。
「じゃあ、明日はそういうことでお願いします。 あっ、それから鎧は赤く塗っておいてください。 アンドレアスさんはやっぱり赤じゃないとね」
「分かった」とケビン。