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35-1 ケビンの計画

 ソドンの要塞

 橙と緑の戦争の後、レッドローズは難民達を捕らえて奴隷として送る政府の軍や奴隷商人達と戦い、難民を保護していた。 レッドローズの名声は各地で高まり、今や5千人を超えていた。 それだけの兵を抱えてやっていけていたのは、緑のレギオンからの資金や物資の支援を受けていたからだった。


 「アンドレアス、聞きましたか。 先日サリル王子が5万の兵を集め、王都を奪還しようとしたそうです」とケビン。 アンドレアスは自分の執務室の窓から外を見ていたが、振り向くと言った。

「ああ、詳しくは知らないが、失敗したのだろう?」

「その通りです。 王都ブレアの郊外で1万の獣人兵と戦い、散々に蹴散らされたようです。 その戦いで王子は行方不明になったということです」

「ふん、だからあんな奴ら幾ら集めてもダメだと言ったのだ」

「そうですね。 ところで、貴方はどこを目指すつもりですか?」


「何を言っている」

「この国をどうするおつもりかと聞いているのです」

「この国の人々を、いずれ奴らから解放してやりたいと思っている」

「それだけですか?」

「それだけだ」

「まあ、良いでしょう」


 10日後

 以前サリル王子と一緒に来た貴族達が、50騎ほどでやって来た。

「ミネルバ殿、是非我らをここにおいていただきたい」 ウオーレン卿と呼ばれていた男が、前回と同じ男とは思えないような態度で言った。 アンドレアスは露骨に顔をしかめると言った。

「ここでは、使えない奴はいらない」

「失礼な、我らはブレアで王を補佐していた重臣ばかりですぞ」ウオーレンは気色ばんで言った。

「その重臣達が補佐して国はいったいどうなった。 王子はどうなった?」

「そ、それは、王子は戦に敗れて退却中に、討たれてしまいました」

「ほう、あなた方は襲われる王子を見捨てて、自分達だけ逃げたということですか」

「そ、そんなことはない」

「まあ、どうでも良いことだ」

「ミネルバ殿、まあそんなに我らを責めないでください。 今回は失敗しましたが、我らが貴方と組めば、我らは貴方をこの国の王にしてみせる」 年長の男が言った。

「何だと! いつ私が王になどなりたいと言った」

「確かに貴方はそんなことを言ったことはない。 しかし誰かが先頭に立ち、この国の人々をまとめ、獣人達をこの国から追い出して、新たな国を建てなければならない」

「なぜそれが私なのだ」

「王子の企ては失敗しました。 我々は気付いたのです。 幾ら血筋の正しい者を立てたところで、真に力の無い者には無理だと言うことに」

「・・・・・」

「貴方は力がある。 民衆の受けも良い。 12王とのコネもある。 この国の中では一番の候補に挙がるでしょう」

「なるほど、王子よりもこちらの方が、分が良いから乗り換えたいということですな」 今まで黙って聞いていたケビンが言った。

「ふざけるな。 そんな寝言は聞いていられない。 我々にはあなた方は必要ない」

「そんな・・・」

「話は終わりだ」

「きっと後悔するぞ!」そう言って彼らは出ていった。


 一ヶ月後、ある街の郊外

 アンドレアス達は、兵を休息させていた。 そこへ町に物資の調達と情報収集に行っていたグラントが戻ってきた。

「町で面白い噂を聞いてきた」とグラント。

「何だ?」とアンドレアス。

「あんたのことだ」

「はあ?」

「レッドローズの団長はアストリアの貴族で軍人だったが、軍に濡れ衣を着せられたため脱走し、12王のサムライになった。 だが獣人族に滅ぼされた故国を憂い、12王から辞去し人々を救うために戦っている。 本名はアンドレアス・グレーガーというそうだ」とグラント。

「何だと! どこからそんな話が流れたのだ」

「あんたは昔から自分のことはあまり話さなかった。 だから俺でさえ知らなかったことが入っている。 ただのデマではないな」とグラント。 アンドレアスはしばらく考えていたが、はっとしてケビンの顔を見た。

「ああ、流したのは私だ」ケビンはあっさり認めた。

「なぜだ?」

「先日、貴族達が来た時のことを覚えているかい?」とケビン。

「それがどう関係あるのだ」

「彼らの言ったことは正しいと私は思う。 確かに今この国には、人々をまとめ上げる強い指導者が必要だ。 王子だ血筋だと言って担ぎ上げた者に集まって来るのは、出世や自分の利益ばかり考えて利用しようとする者ばかりだ。 私もあなたが最もふさわしいと思っている。 私はあなたをこの国の王にするつもりだ」

「何だって、私はそんなことを望んでいない」 アンドレアスは慌てて言った。

「アンドレアス、これは望む、望まないの話ではないのだ。 あなたがやるしかないのだ。 だから私は噂を流したのだ。 後からマイナスの話が出るより先にきちんと事実を出しておいた方が良いと思ってね」

「俺もそう思うね」とグラント。

「オレも団長が王様になるんだったら、やりがいがあるな」とゴーセル。

「では決まりだな」とケビン。

「勝手に決めるな」アンドレアスは頭を抱えた。


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