34-5 黄の王都攻防戦(3)
シーウエイは焦っていた。 バズーカは想定していたので、戦車のある程度の損害は覚悟していたが、秘密兵器の飛行機がやられる事は想定外だった。
(何だ、あれは。 あれも向こうの世界の兵器か? 飛行機も知っていたと言うことか)
「あの機銃と砲を破壊しろ!」 シーウエイは兵達に命じた。 銀の兵達は緑の本陣に向って攻撃を開始した。
機関砲は砲身が赤くなっていった。
「撃つのを止めさせろ! 砲身が破裂するぞ」ユウキが命じた。
「連射が続くと砲身が持たない。 まだまだ改良が必要だ」 ユウキが俺に説明した。 5台あった機関砲は一斉に鳴り止んだ。 だが飛行機の方も15機のうち11機が撃ち落とされていた。 残った4機の飛行隊はその機を逃さなかった。 地対空ミサイルの方も装填準備のために丁度沈黙していたのだった。 飛行機はこちらに向って機銃の銃弾を浴びせてきた。 俺の2メートルほど脇の地面にも銃弾がめり込んだ。
「カケル様、お下がりください、危険です」レオンが叫んだ。
「大丈夫だ」 そう言うと俺は逆に前に踏み出し、飛行機に向った。 右腕を伸ばすと、俺は火球を放った。 それは巨大な火球で、一瞬で飛行機が炎に飲み込まれた。 飛行機は胴体が爆発したが、墜落せず機体はそのまま燃え尽きた。 俺は続けざまに次の飛行機も破壊した。 残る2機はその様子を目の当たりにすると、進路を変え避難していった。 2機の飛行機はそのまま東に飛び去っていった。
「クソッ、ダメか」シーウエイは本陣のテーブルを叩いた。
(どうする、ガスを使うか。 いやダメだ、向こうは風を操れる。 こんな時に赤の連中は何をしているんだ)
「全軍進め、奴らを殲滅するんだ」シーウエイは命じた。
(いけるはずだ、こちらの方が兵も多いし、銃を持ったこちらが有利だ)
ルークが率いる騎竜部隊が銀の軍勢に突入した。 銃弾が飛び交う中を、槍を縦横に振るって敵をなぎ倒していった。 騎竜部隊が銀の軍勢を攪乱し、その後に歩兵部隊が突撃を開始した。 砂漠での戦いは黄の兵の方が上手だった。 距離があるうちは銃を持った銀が有利だったが、白兵戦になってしまえば勇猛な黄の兵士が銀の兵士を圧倒した。
セシウスはトウリン達に命じ、銀の軍勢を横から攻撃するように命じた。 それから自分の騎竜を連れてこさせると、自身はガーリンの突撃部隊を率いて北側を迂回して背後を襲うつもりだった。 トウリンの率いる歩兵部隊は、銀の軍勢の北側から襲いかかり、銀の右翼は大きく崩れていった。
戦闘が開始されてから3時間が経つ頃には、大勢はほぼ決したかに見えた。 セシウスがシーウエイの本陣を北から襲い、全体の陣形はもう維持出来なくなっていた。
「クソッ、私がここまでやられるとは、残念だがここは一旦退くしかない」 シーウエイは退却を命じた。 銀の兵達は、追撃を警戒しながら20キロほど後退し、砂漠の端の丘に布陣した。 そして黒油の井戸を守る3万の軍勢を呼び寄せた。
シーウエイの軍勢はこれらを集めても7万ほどになっていた。
「もう一度練り直さねば、この戦だけは負けられないのだ」 シーウエイはテーブルに両肘をつくと指を組んだ。
それから3日間シーウエイは兵を動かさなかった。 3日目に赤の軍勢が到着した。