33-1 ターニャの決断
翌日、水晶のレーギア
ヒョウマは会議室で皆の前で言った。
「私は昨日、カケル王に対して正式に臣従することを誓った。 私はカケル王のサムライとなった」 ギルダは驚いた。 白はカケル王と同盟を結んだものと思っていたからだ。
「白と水晶の関係は白紙にしようと考えている。 水晶の今後についてはターニャ王の判断に任せる」とヒョウマは続けた。
ターニャは困惑の顔をしたが、臣下の意見も聞いた上で判断すると言うことで返答を保留した。
ギルダが俺の所へやって来た。
「また会えましたね。 しかもこんなに早く」
「本当ですね。 しかもこんな形で。 我々ももう一度今後のことを考え直さなければなりません」と意味深なことを言った。
「ところで、良く戦いに間に合いましたね。 聞いていたのでは到着はあと2、3日遅れるとの事でしたが」
「通常のペースでは間に合わないと思い、道の良い場所は暗くなっても走らせたのです。 間に合って良かったです」
ギルダはいつ銀が攻め寄せるかも知れないということで、その日の内に軍を率いて戻った。
ターニャの執務室
ターニャはコリンと内政をとりまとめているクレルの三人で、今後の事について協議をしていた。
「選択肢としては三つございます。 一つ目は、我らは独立したまま、緑と同盟を結ぶ。 二つ目は緑の傘下に入る。 三つ目はこのまま白のヒョウマ王に従属する、です。 私は一つ目の案がよろしいかと存じます」 クレルが進言した。
「私は二つ目の案がよろしいかと思います。 もう単独でやっていけるレギオンはございません。 今回もカケル王のご助力がなければ、恐らく勝てなかったでしょう」とコリン。
「だが、我らは緑との戦争で多くの兵を失った。 兵や民衆は反発するだろう」 ターニャは難色を示した。
「ターニャ様、それは緑も同じです。 そしてあの時はこちらが攻め入っているのです。 負い目はこちらにあります。 それなのにカケル王は我らを救ってくださいました。 今後の事を考えれば、同盟ではなく傘下に入った方がよろしいでしょう。 そうすれば、カケル王は我らを見捨てる事はないでしょう」
「カケル王の傘下に入るのならば、今まで通りのままでも良いのではないか。 王たる者が、主君を頻繁に替える事には抵抗がある」とターニャ。 コリンはターニャがヒョウマの事を気にしていることに気がついた。
「ターニャ様、王たる者は常にレギオン全体の事を考えねばなりません。 ヒョウマ王に従属したままでは、ターニャ様はカケル王の陪臣になってしまいます。 水晶の兵達も肩身が狭い思いをすることになります」とコリンは説得した。
「分かった、コリン。 お前の言うとおりだ」ターニャは同意した。
ターニャは協議の後、ヒョウマと俺の所にやって来た。 俺はセシウス達、レギオンの兵をゲートで帰していたところだった。 帰りも何日かに分けてやらなければならなかった。
「カケル様、ターニャ王は私とのサムライ契約を解消しましたので、カケル様のサムライとしていただきたい」とヒョウマ。
「えっ、私は良いけど、ヒョウマはそれで良いのかい?」
「ええ、結構です」とヒョウマ。
「分かった」
「よろしくお願いいたします」とターニャ。
「ああ、それからもう一つ。 私とターニャは結婚することにしました」
「何だって! それは、おめでとう」 俺は驚いたが、そう言うしかなかった。