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32-6 水晶の王都防衛戦(2)

 3日後、王都の西

 ゲブラ達、金の軍勢は水晶の軍勢が陣を構える丘の3キロほど手前まで到着した。


 「どうする?」グレイガがゲブラに聞いた。

「ふん、奴らの考えなど手に取るように分かる。 どうやら水晶は緑と手を組んだようだ。 緑の王都から2万の兵が慌ただしく出兵したそうだ。 だが援軍が到着するにはどんなに急いでも20日以上はかかるはずだ。 奴らはここで我らを足止めして援軍を待つつもりだろう。 だが我らはそんな時間を与えない」

「どう攻めるんだい?」とソアラ。

「攻めない」とゲブラはあっさり言った。

「えっ」

「我らが北の丘を攻めれば、南の山から兵が下りて背後を突き、逆もしかりだ。 かといって二手に分けて攻めれば、地形が守る側に利してこちらも大きな損害が出る」

「じゃあ、無視して間を通って王都を目指すのかい?」とグレイガ。

「黙って通してはくれないだろう。 通過中の我々を両側から攻撃し、抜け出たところには伏兵が待ち構えているだろう」とソアラ。

「その通り。 なので我々はあの山の南を迂回する」とゲブラ。

「そんな事をすれば、山を下りてきた軍勢に背後を襲われるぞ」とグレイガ。

「それが狙いなのだろう? 慌てて降りてきた奴らを返り討ちにするつもりだね」とソアラ。

「ご明察。 逆に待ち構えて、態勢が整わないうちに一気に叩き潰す」とゲブラ。

「分かった」


 翌朝、コリンの本陣

 「コリン将軍、金の軍勢がこちらに向わず南下を始めました」 斥候の兵が報告した。

「そうか、分かった」コリンは慌てなかった。 これは想定内だったからだ。 敵は ブロン山を迂回することにしたのだ。

「作戦4に切り替える。 我らはブロン山の東側を回って、奴らの前に出るぞ。 ブロン山の軍勢と挟み撃ちにする」 コリンは副官に命じた。 そして東側に丘を降ると3万の軍勢を南に進めた。


 ブロン山山頂、ターニャの本陣

 ターニャは山の上から金の軍勢の南下を確認した。 そしてコリンの軍勢が東側に降って来るのを見て、理解した。

「よし、我々は奴らの背後を追うぞ」 敵の軍勢が山の南を回ったタイミングで、4万の軍勢は山を降りた。


 「よしこの辺で良いだろう」 ゲブラは軍勢を止めた。 そこは所々に腰までの細長い草が生えた草原だった。 グレイガとソアラがやって来た。

「ここで迎え討つのか?」とグレイガ。

「ああ、反転して迎撃態勢をとれ。 それから東側からは北側に布陣していた軍勢が挟撃しようとして来るはずだ。 先行しているガーラントとボスリアの兵達に備えさせろ。 後ろの奴らを壊滅させる間の時間、持ちこたえるだけで良いと伝えろ」とゲブラ。

「分かったわ」 ソアラは伝令を走らせた。


 ゲブラ達、アデル族の軍勢が迎撃態勢を整えた頃、前方に水晶の軍勢が現れた。 しかしターニャはすぐには攻撃を開始しなかった。 アデル族が攻撃を開始しようとしたその時、異変が起こった。


 南の草原から突然無数の黒い物体が空に浮かび上がった。 フィーゲルが率いるボーク部隊だった。 3千のボーク部隊は編隊を組み、アデル族の軍勢に攻撃を開始した。 金の軍勢は意表を突かれた攻撃に、慌てた。 アデル族の兵達は次々と襲いかかる光の矢に負傷者が続出した。 アデル族の兵の中には下から火球や弓による攻撃を試みる者もいたが、ほとんど当たらなかった。


 「何だ奴らは? 水晶の別動隊か?」とグレイガ。

「クソッ、これも敵の想定内で我々が罠にかかったということなのか?」ゲブラは悔しがった。


 フィーゲルはひとしきり攻撃を繰り返すと、編隊を率いて南に撤収していった。 そしてそれを合図にするかのように、ターニャは突撃を命令した。


 「奴らに機先を制せられたか。 だがこれくらいで我らを仕留められると思ったら大間違いだぞ」 ゲブラが独り言を言っていたその時、兵が叫んだ。

「ゲブラ様、南から軍勢がやって来ます」

「何、奴らがまた攻めて来たのか?」

「いいえ、今度は騎竜部隊と歩兵部隊です」

「何!」 ゲブラは目を凝らすと2、3キロ南からこちらに向ってくる軍勢が確かに見えた。 その数おおよそ2万。

「あれは、水晶の軍勢ではないぞ。 あれは、緑の軍勢だ。 どうしてここにいる」


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