32-3 ターニャの救出(2)
白のレーギア、王の居室
アレンはバルリ、コーレンと一緒にワインを飲んでいた。
「いつやって来ますかねえ」とバルリ。
「おそらく今夜あたりだと思う」 アレンはそう言い杯を空けた。 四角いテーブルの三方には三人が座り、残った一方の上には楕円の形の鏡が立てて置いてあった。 その鏡には鎖に繋がれた女性の姿が映っていた。
「オレ、あの女と楽しんできても良いかな」とコーレン。
「ダメだ。 事が済むまで手を出すんじゃないぞ」とアレンは睨んだ。
「まったく男は、お酒とそれしか考える事はないのですか」とバルリは蔑むように言った。
「来るならサッサと来いってんだ。 グズグズしてると暇で寝ちまうぞ」 コーレンは大きなカップを一気に空けた。
「飲み過ぎるな。 向こうは12王だ。 油断するとやられるぞ」
「でも向こうは一人、兵士も多くても数十人でしょう? 水晶も戦いを控えているから大挙しては来ないでしょう」
「だがここは元々奴の城だ。 内部に詳しい。 あの部屋にいるとすぐ目星をつけるだろう」
「だからこうして見張っているんでしょう。 あそこに現れたら、罠にかかった熊と同じよ」
「そうだよ」とコーレンは言いながらカップに酒を注いだ。
緑のレーギア
ユウキは作戦を説明した。 その後ヒョウマが補足した。
「白のレーギアは巨大な石の立方体だ。 中は迷路のように複雑だ。 恐らくターニャは地下にある牢獄だと思う。 そこはレムを遮断する石で造られていて、念話も通じない」とヒョウマは説明した。 説明を聞いていたのは俺と警護班のメンバー、それと特殊部隊を率いるエランだった。 警護班の方は、今回はジュリアンが率いる。 リースとエレインが抜けたためだった。
「さて、では行くか」俺は言った。
白のレーギアの屋上
俺達はヒョウマのゲートでここまで来ていた。 ここに来る前に街中で30人の特殊部隊の兵を展開させた。 彼らの目的は街中での紫の兵に対する陽動だ。 戦わず混乱させることに重点が置かれた。
屋上に立つと、早速街中の数カ所で火の手が上がった。 街の建物はほとんどが石造りのため、延焼することはなかった。
「ジュリアン、後は任せた」 俺は言った。
「はっ、カケル様もお気を付けて」そう言うと、アドルやレオン達とレーギア内に入って行った。 クレオンが案内役として同行した。 ジュリアン達の目的は二つ、一つはもしターニャが地下牢にいなかった場合、考えられるのは王の居室。 王の居室に向い、ターニャの所在を確認することだった。 もう一つは、レーギア内の兵を引きつけることだった。
「じゃあ、俺達も行こうか」ヒョウマはそう言うとゲートを開いた。
レーギアの地下牢
ターニャがいたのは牢内ではなく、その隣の拷問部屋だった。 ターニャは両手を鎖に繋がれその鎖は天井に繋がれていた。 鎧は脱がされ、シャツとズボン姿で冷たい石の床に座っていた。 疲れたようにうなだれて動かなかった。 額にはハチマキのような物が着けられていた。 その部屋はかなり大きく壁際には様々な拷問器具が置かれてあった。 そしてターニャの周りには幾つもの機械仕掛けのボウガンが仕掛けられていた。
丸く空間に穴が空き、ヒョウマが現れた。 俺は用心しながらヒョウマに続いた。 すると別に空間に穴が空き始めた。 俺は即座に近くの拷問器具の陰に隠れた。
「ターニャ! ターニャ、大丈夫か」 ヒョウマが近寄ろうとした時、間の空間に穴が空き、そこからアレン達三人が現れた。