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30-11 決意 

 襲撃から一週間後

 グレアムとリースの葬儀が終わり、ようやく少し落ち着いたところだった。 エレインは命が助かり、完治までは1カ月ほどかかるが元のように動けるだろうとのことだった。 王の居室の下の階に行くと、二人が抜けただけで大分寂しく感じた。 二人とも明るく気さくな性格だったため、大事なムードメーカーだったのだ。


 グレアムが亡くなった穴は大きかった。 普段は出しゃばることもなく、陰でしっかり内政の方をまとめていたのだ。 誰もグレアムには異論を唱えず、レギオン内の人望も厚かった。 俺が新参者で、レギオンで好き勝手できたのも、グレアムがレギオン各部門の担当の者達との間に入りうまく調整してくれていたからだ。 俺は頭が痛かった。 グレアムの代わりを任せられる者がいなかったからだ。 最初に頭に浮かんだのはユウキだった。 軍事をセシウス、内政をユウキという二本柱でいくという案だった。 しかしすぐに諦めた。 ユウキは作戦立案や情報収集、兵器開発などに深く関わっており、これ以上担当を増やすのは負担がかかりすぎるということと、自分の関心のあることに集中しすぎてしまうため、内政全体を見るなど無理であった。 次に候補に浮かんだのは、マリウスだった。 彼は永年グレアムの側近として仕え、内務の事も良く分かっていた。 しかしマリウスはその歯に衣着せぬ物言いと若さから、レギオン内から反発を招くのは必至だった。 他の大臣達も一長一短があり適任者は見当たらなかった。 俺が頭を抱えていた時、ジュリアンが入って来た。


 「カケル様、スペンス殿がおいでになっておられますが、如何いたしますか」

(そうか、避難民居留区の報告に来たいと言っていたな。 待てよ、スペンス?)

「分かった、通してください」


 スペンスがソファーにかけると早速、状況を報告した。

「状況は分かりました。 皆よくやってくれているようですね」 俺は報告に区切りがついたところで言った。


 「スペンスさん、実は大事な頼みがあります」

「何でしょう。 私の出来る事でしたら何なりとお申し付けください」 そう言うと、お茶のカップを手に取った。

「私のサムライになってください」

 スペンスは驚き、危うく口に含んだお茶を吹き出しそうになった。

「何ですと」

「グレアムの代わりに内務大臣として、内務全体を見て欲しいのです」

「グレアム様の代わりなど私には無理です。 内務のことも良く知りませんし」

「各部門は各大臣に任せれば良いし、マリウスを副大臣として補佐させます。 重要なことは、各大臣をはじめとした担当部門との調整だと思います」

「しかし、ユウキ様の方が適任かと思いますが・・・」とスペンスは難色を示した。

「正直に言います。 スペンスさんもご存知でしょう。 レギオン内には私のやり方に不満を持つ人達がいることを。 アドルやアビエルなど他の種族の者を次々にサムライにし、昔からのやり方を変えていることに、古くから仕えている人達は自分達がないがしろにされていると感じているのだと思います。 グレアムはそんな人達の不満を聞きつつ、私の考えを実現するため各部門と調整をしていたのです。 そんなことはユウキにはできません。 ですので、内務大臣は以前からレギオンにいる者で、古いレギオンの人達からも一目おかれる者でなければいけないのです」

「・・・・・・」

「お願いします。 能力においても、人物においても信頼できるのはあなたしかいません」

「私をそこまで見込んでいただけるとは・・・。 分かりました、お引き受けいたします」

「ありがとう。 よろしくお願いします」


 スペンスが帰った後、俺は椅子に深く座った。

(さてと、これでとりあえず新しい態勢はできた。 次だ。 奴らは許さない、必ず後悔させてやる)


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