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30-9 カケルの危機(3)

 ゲブラは金属製の輪を俺に投げてよこした。 俺は訳もわからぬまま手を伸ばした。

「それを首にかけるんだ。 おとなしく言うとおりにすれば、このじいさんは傷つけない」とゲブラ。 俺は訝しんだ。

「カケル様、言うとおりにしてはいけません。 何を企んでいるか分かりませんぞ」 グレアムは叫んだ。

「余計なことを言うんじゃない」 グレイガがグレアムの胸ぐらをつかんで言った。 その時、グレアムは袖の中からナイフを取り出すと、グレアムの左腕に突き刺した。

「クッ、いつの間に・・」 グレイガは思わず手を離した。 グレアムは逃げようとしたが、グレイガは逃がすまいとして、グレアムの背中を切りつけた。 グレアムはその場に倒れ込み、逃げられないと悟ると自分の胸にナイフを突き立てた。

「グレアム! 何てことを・・・」 俺は思わず駆け寄ろうとした。


 「おっと、動かないでくれ。 早く輪をかけるんだ。 すぐに手当すればまだ助かるだろう。 しかしグズグズしていると間に合わないぞ」とゲブラ。

「クソッ!」 そう言うと俺は銀に光る輪を首にかけた。

「座れ」とゲブラ。 俺は意図が分からず立ち尽くした。

「座るんだ!」 俺はグレアムが気になったので、取りあえずしゃがんだ。

「かかった!」 ゲブラがそう言った途端、銀の輪が縮んだ。

「何だ!」 俺は輪に指をかけ外そうとしたが外れなかった。

「ムダだ。 もう貴方は私に逆らえない」

「もうじいさんは用なしだ」とグレイガはグレアムから離れた。

「何を言っている。 誰がお前なんかに従うか」 俺はグレアムに駆け寄ろうとした。

「動くな!」とゲブラ。 俺の体が突然動かなくなった。 俺はそれを無理に動こうとすると、急に首の輪が締まりだした。

「その首輪は私の命令に逆らうと締まり出す。 これから緑及び藍、青は私の支配下に入ってもらう」

「何だと! そんな事認められるか」とアドルは剣を抜くと、ゲブラに斬りかかった。 しかしその間にグレイガが割って入り、アドルの剣を受け止めた。

「言っておくが、貴方の部下が私に敵意を向けても同じです」


 俺の首輪は益々締まりだした。 俺は首輪を引きちぎろうとして力を入れた。

「ムダ、ムダ、その首輪は切ることができない。 それよりお前達、武器を捨てて跪け」 ゲブラは集まって来た兵達に命じた。

「オフセット」 俺は何とか声を絞り出した。 しかし何も起こらなかった。

「それはレムの力には違いないが、単純な術式ではないから無効化はできない」

 意識が飛びそうになる寸前に首輪は緩んだ。

「はあ、はあ、クソッ」 俺は激しく呼吸繰り返すと、ゲブラを睨んだ。

「諦めて私に従え」


 俺はグレアムを見た。 まだ死んではいないようだったが、もう時間が無いだろう。 リースも殺された。 エレインも瀕死だという。 俺は急激に怒りが沸き起こってきた。

「ふざけるな! 俺はお前を許さない」 突然周りの空気が変わった。 俺のゲブラに対する敵意に反応して再び首輪が締まりだした。

「バカな、それは敵意に比例して締まるぞ。 そんな敵意をむき出しにしたら死ぬぞ」


 俺は首輪に指をかけると引きちぎろうとした。

「学習しない奴だな。 それは特殊な金属で12王と言えど引きち切れはしない」

(俺はこんな奴に屈しない。 絶対にぶん殴ってやる) そう思いながらも意識は次第に遠のいていった。 首輪がきつく締まり続けるなか、俺の手が赤く光り始めた。 そして首輪の金属に変化が現れてきた。 赤く熱せられたかのようになり、指の当たっている部分が溶け始めたのだ。 そして俺の意識が落ちる寸前に、首輪が切れた。

「何! 有り得ない」 ゲブラが驚いた。


 俺は呼吸を整えながら、グレアムの方へ向った。 グレアムの横にしゃがみ込み、レムで治療を試みた。 出血がひどい、傷も内臓まで達しているだろう。

「グレアム、しっかりしろ。 死ぬな」 俺が呼びかけると、グレアムは静かに目を開けた。

「カケル様・・・、私はもう助かりません。 やっと・・ゴードン様達のところへ行けます。 カケル様、あなたは・・・、このレギオンの・・・この大陸の・・・希望です。 良き王に・・・良き大陸の王に・・・・おなり・・・」 グレアムはそこまで言うと力尽きた。

「グレアム・・・」 俺はグレアムの目を閉じてやった。


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