30-6 戦略の転換
緑のレーギア、全体会議
橙との戦争後の最初の全体会議だった。 戦後処理の報告が終わった後、スウゲンから提案があった。
「この大陸の勢力が急速に変化してきています。 現在の勢力は我らも含め紫と銀の3つの勢力に大別されます。 そして紫は水晶を、銀は黄を虎視眈々と狙っています。 もしこれが達成されると、次に狙われるのは我々です」とスウゲン。
「我らはどちらとも敵対しているからな」とセシウス。
「私が恐れている最悪のシナリオは、紫と銀が手を組むということです」
「紫が人族と同盟を結ぶとは考えにくいと思うが・・」とアビエル。
「3勢力の均衡を崩すために、一時的な同盟は十分あり得ると考えます。 敵の敵は味方という考え方です」
「なるほど」とバウロ。
「そうなった場合、銀は黒に侵攻し、同時に金と水晶と橙がここに侵攻を開始するでしょう」
「そうなったら、我々にまず勝ち目はありませんね。 黒もまだ単独で銀を退けられるだけの兵力はないでしょう」とユウキ。
「その通りです。 そして我々は紫の支配を受けることになるでしょう」とスウゲン。
「それはまずいですね」とアドル。
「どうするのですか」とミーアイ。
「戦略の転換が必要です」とスウゲン。
「戦略の転換ですか」とトウリン。
「そうです。 今までは余裕もなく、戦略と言えるような戦略も立てられなかった訳ですが、これからはそうも言っていられません」
「どう転換するのですか」と俺は聞いた。
「一つは、銀と同盟を結びます。 そして協力して紫に対抗するのです」
「何だって、それは無理だろう」とセシウス。
「確かに、成功する確率は二割程度でしょう。 それに恐らく向こうは条件として、黒との同盟解消を要求してくるでしょう」とユウキ。
「そうですね、ですがこちらも生き残るためには、やってみる必要があると思います」とスウゲン。
「黒を裏切って銀に差し出すような事はできないぞ」と俺は言った。
「それが失敗した時にはどうするのだ?」とバウロ。
「こちらから、水晶もしくは橙を取りにいきます」
「何だって、こちらから攻めると言うのか」とセシウス。
「そうです。 これも容易ではありませんが、これしかありません」
皆が黙り込み、一斉に俺の顔を見た。
「状況は分かった。 だがこれは我らの今後の命運を左右するものだ。 もう少ししっかり検討してください」
「承知いたしました。 しかしあまり時間の余裕は無いことをご承知おきください」
沈んだ空気のまま会議は終了した。
会議の後、ユウキがやって来た。
「やはりスウゲンさんも同様の事を考えていただろう。 スウゲンさんは取りあえず現状理解と危機感を持ってもらうことから始めようとしたようだけど」とユウキ。
「状況は理解したが、どうもこちらから攻めると言うのは抵抗があるなあ。 侵略戦争じゃないか」
「だが、冗談抜きにそんな事をいっていたら、俺達は滅ぶぞ。 セントフォレストも多くの死者と孤児を出すことになる。 それに折角助けた難民達もまた路頭に迷うことになる」
「分かったよ、だがそんなに簡単に決心できない」




