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30-5 ゲブラ王の決断

 ゴルドン、金のレーギア

 金色に輝く玉座に座るゲブラ王の前に、ムギン王は跪いていた。

「ゲブラ王のご期待にそえず、緑に敗北を喫したこと誠に申し訳ございません」 ムギンは頭を垂れたまま報告した。 脇に控えるグレイガとソアラはムギンを蔑むように見下ろした。

「それでこちらの損害はどの程度だ」とゲブラは不機嫌に言った。

「死者は3万弱、負傷者を入れると3万5千ほどです」

「半数がやられたということか。 敗因は何だ」

「奴らの卑劣な詐術によるものです」とムギン。

「そうか? お前達がバカなだけじゃないのか」とグレイガ。

「何ですと」 ムギンはグレイガを睨んだ。

「グレイガ、よせ」とゲブラ。

「緑の兵は強いのか?」 ゲブラは聞いた。

「負けたから言うわけではございませんが、強いです。 彼らは様々な策を弄し、機先を制してこちらの力を発揮できないようにするのです。 更に緑のレギオンには藍や青の他に様々な種族が合力し、それがうまく連携しあって攻撃を繰り出してくるのです」

「やはり、向こうの方が上手だという事じゃないか」とグレイガ。

「よせと言っているだろう」 ゲブラはグレイガを睨んだ。

「すみません」

「分かった。 橙は当分の間、タイロンとアストリアの安定と兵力の回復に努めるのだ」

「ははっ」

「他に何か報告すべき事はあるか?」

「はい、今回我らが敗れたことによって、タイロンとアストリア内で反乱分子の活動が活発化しております」

「そうか、しっかり対処するように。 良いか、もし反乱軍に王都を奪還されるような失態を犯したら、今度こそお前の首と胴体は離れることになるだろう」 ゲブラは冷たく言い放った。

「承知いたしました」


 ムギンが退出した後、ソアラが言った。

「ゲブラ、どうするつもりだい? 水晶よりも先に緑を相手にするのかい?」

「うむ、どうしたものか。 まずは水晶を先に考えていたが、緑をこのままにしておくと、後々厄介になるような気がしてきた」

「緑には策士がいるようだ。 まともに戦ったらこちらも手痛い目にあうんじゃないのか」とグレイガ。

「だろうな、俺も手強いと思う」

「じゃあ、ムギンの時と同じようにやるっていうのはどう?」とソアラ。

「首輪か。 だがたぶんムギンの時にようにはいかないだろう。 警備も厳しいと思うぞ」

「だが、もしそれがうまくいけば、一気に勢力がひろがるぞ。 なにせ3つのレギオンを支配しているのだから」とグレイガ。

「うーん、分かった、少し考えてみよう」


 その夜、ゲブラの部屋にザウフェルが現れた。

「ご用でしょうか?」

「済まない。 少し聞きたいことがある。 緑の王についてだ」

「緑の王、ですか・・・」

「ああ、性格、能力、生い立ちなど、何でも良いから知っている事を教えてくれ」

「承知いたしました。 王の名前はカケル・ツクモ、異世界からきた者です。 歳はまだ20代になったばかりです。 性格は温厚で人望はあるようです。 レムの能力も高く、過去にはザウロー王、メルデン王、最近ですとムギン王を直接対決で破っております」

「そうか。 頭脳の方はどうだ」

「愚かではありません。 王になって3年、巷での評判も悪くありません」

「分かった、ありがとう」

「何か開始されるのですか?」

「うん、まあな。 検討中だ」

「そうですか」 そう言うとザウフェルは消えていった。


 翌日、ゲブラはグレイガとソアラに言った。

「やるぞ。 “斬魔衆”を呼んでおけ」

「何、そこまですると言うのか」とグレイガ。

「ああ、緑の王はこのまま放っておくのは危険だ。 やるからには失敗は許されない」

「分かりました」 二人は応えた。


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