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30-3 反乱軍

 ソドンの要塞

 「ミネルバ様、兵の一団がやって来ます。 その数3千です」 見張りの兵が報告した。

「どこの軍勢だ」とアンドレアス。

「分かりません。 ですが人間の軍勢です。 ただ正規軍では無いようです」

「分かった。 軍勢は入れるな」 アンドレアスは命じた。

「はっ」兵士は戻っていった。

「どこかの傭兵団か?」とアンドレアス。

「3千を超える傭兵団は、今はもう存在しないはずだ。 もしかしたら反乱軍かも知れない」とケビン。

「反乱軍?」

「ああ、橙が緑に敗れたため、タイロンとアストリアに駐屯する橙の軍勢が大幅に減った。 これを好機と捉えた貴族達が兵を集め、橙の支配を打倒しようとしているという話だ」

「フン、そんな奴ら幾ら集まろうと役に立ちやしない」とアンドレアスは鼻で笑った。


 小一時間後、また報告が入った。

「アストリア王国の第一王子、サリル・クレストン様とその手勢との事です。 王子は団長との面会を求めておられます」

「王子だと」 アンドレアスはケビンの顔を見た。 ケビンは頷いた。

「分かった、通せ。 ただし王子とお付きの者数名だけだ。 軍勢は一兵たりとも中に入れるな」

「かしこまりました」 兵は駆け戻っていった。


 しばらく後、会議室に金髪の若い男が3人の男と一緒に案内されて入って来た。 こちらはアンドレアス、グラント、ケビン、ゴーセルの4人だった。 アンドレアスは一番奥の席に座っていた。 客の4人は手前の空いている席に座った。 すると一番下手に座った男が、開口一番怒鳴った。


 「無礼者が! こちらのお方はアストリア王国の第一王子であらせられる、サリル・クレストン様だぞ。 なぜに団長自らお出迎えに現れぬ。 なぜ王子に上座を譲られぬ。 本来ならお前達ごとき者が、お目見えを許されるお方では無いのだぞ。 不遜が過ぎようぞ」

「言いたいことはそれだけか?」 アンドレアスは素っ気なく言った。

「何だと」

「ならばこちらからも言おう。 アストリア王国は滅亡した。 こちらの方は“元”王子だ。 それにあなた方は我々が招いた客では無い。 何故出迎えなければならない」

「クッ、どこまでも傍若無人な。 これだから傭兵団は、礼儀も作法もわきまえぬ下賤の集まりだ」

「ははは、礼儀、作法では敵は倒せませんのでな」とグラント。

「もう良い、黙るのだウオーレン卿」 王子が苛立ちながら言った。

「はっ、申し訳ございません」

「本題に入ってくれ」 アンドレアスが促した。


 王子の隣に座った最も年長と思われる男が話し始めた。

「王子は橙の打倒とアストリア王国の再建を望まれております。 そのためには王子には多数の兵力が必要です。 どうか力を貸してください」

「私に仕えよ。 さすれば私が王都に凱旋し、王に即位したあかつきには、爵位と領地を授ける」

「クッ、クッ、クッ・・・」 アンドレアスは笑いをこらえられなかった。

「何がおかしい」 ウオーレンと呼ばれた男が怒鳴った。

「いや、失礼。 あなた方がよくよく現実を理解しておられぬのでね」とアンドレアス。

「何!」 王子もさすがに気色ばんだ。

「我々は礼儀も作法も知らぬ下賤な者達なのでね。 空手形では動きませんよ。 我々を雇いたかったら、ここに金貨の袋を積みなさい」

「この守銭奴どもが!」とウオーレン。

「私は貴方の正体を知っていますぞ。 軍に知られればまずいことになるのではないですか」 年長の男は、アンドレアスの目を見つめながら言った。

「どうぞお好きなように」 アンドレアスは興味無さそうに言った。

「ではどうしても私には従えないと言うのか。 私には他にも続々と兵が集まり3万を超そうと言うのに。 後から申し出ても遅いぞ」

「どうぞご自由に、我々は我々でやっていきますので・・・」

「分かった。 だがここは明け渡してもらうぞ」と年長の男が言った。

「何!」

「当然であろう。 ここはアストリアの領地内だ。 当然王子の所有物だ。 お前達は不法占拠しているにすぎない」

「先ほども言ったはずだぞ。 もうアストリア王国は滅亡したのだ。 “元”王子に所有権など無い。 それでも強弁するなら力ずくで奪うのだな」

「何という奴らだ。 こちらは王子自ら足を運んだというのに。 所詮は野盗の群れと変わらぬのか」 年長の男も握った拳を振るわせながら言った。

「ゴーセル、客人達はお帰りだ。 門までお送りしろ」

「分かりました」 ゴーセルは立ち上がると、ドアを開けた。


 戻ってきたゴーセルはアンドレアスに尋ねた。

「なぜあいつ等と供に戦わないのですか。 橙と戦う事に変わりは無いのでしょう?」

「あんな奴らと一緒になど戦えるか。 奴ら3万いようが5万いようが役になど立たない」とアンドレアス。

「良いか、あいつ等と一緒に戦ったら命など幾つあっても足らないぞ。 我々は前線の一番きついところに当てられ、奴らは後方の安全な場所から出てこようとはしない。 そして負けそうになったら最初に逃げ出す」とグラント。

「なるほど、確かにそうだ」 ゴーセルは笑った。

「それにしても、あの王子はダメですね。 この前ここに来た緑の王様とは全然格が違うというか」

「カケル様をあんな奴と比べるな」


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