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28-17 因縁の戦い

 セシウスもゴラムも騎竜を降りた。 ゴラムは右腕の義手を替えた。 肘から先が鋼鉄製で小さな突起が多数付いていた。 手首から先は短めの剣になっていた。 左の前腕には、左右に短い剣が装着された。 セシウスは剣に持ち替えた。


 二人は準備が整うと、睨み合いながら徐々に間合いを詰めていった。 先に動いたのはゴラムだった。 ゴリラの巨体からは想像もつかないほど、動きが速かった。 ゴラムは一気に間合いを詰めると、右の義手の剣がセシウスの胸を切り裂こうとした。 セシウスはその剣筋を見切って最小限の動きで剣をかわすと、すかさず懐に飛び込んだ。 剣で胸を突いたが、ゴラムの左腕の剣で防がれた。 ゴラムは義手で殴り倒そうとしたが、セシウスは右に転がり避けた。 セシウスが距離を取って立ち上がると、再び睨み会った。


 二人の戦いは5分以上続いたが、どちらも有効な打撃を与えることが出来なかった。 しかし、明らかにゴラムの動きが悪くなってきていた。

(長引くのは不利だな。 こんな手は使いたく無かったが仕方ない)ゴラムは思った。 ゴラムは義手をセシウスに向けると、左手で義手の付け根に触った。 すると、義手の剣の脇から網が飛び出した。 投網のように広がった網がセシウスを襲った。 セシウスはとっさに脇に跳ぶと網の一部が体をかすったが、かろうじてかわすことができた。

「クソッ、し損じたか」とゴラム。 しかしこれがゴラムにとって裏目に出た。 網が地面の岩に引っかかってしまったのだ。 ゴラムは焦った。


 セシウスはこの機を逃さなかった。 間合いを一気に詰めると剣を上段から振りかぶった。 この一刀で決めるつもりで剣にレムを乗せた。 ゴラムは死を覚悟した。

(なんてことだ。 自業自得とは言え、このまま死ぬわけにはいかぬ。 セシウスだけは殺す)

 ゴラムは左手を突きだし、剣を受けるのでは無く熱線で攻撃することを選択した。 セシウスはゴラムの意図を理解し、とっさに剣の軌道を変えるとゴラムの手首を切り落とした。

「グッ!」 ゴラムの方が一瞬遅かった。 切り落とされた手首から熱線が放出されたが、手首を切られた痛みと衝撃で、狙いがはずれ誰もいない空中に放出された。 セシウスは一瞬体勢が崩れたが、すかさず立て直すと跳び上がり、ゴラムの首をはねた。 ゴラムの苦痛に歪んだ頭が、地面に転がった。


 辺りに悲鳴と怒声と歓声が沸き起こった。

「将軍のお体を回収しろ」 ベッジは兵士に命じた。 セシウスはそれを許した。 兵士達はゴラムの体を槍と布で即席に作った担架に載せ運んだ。 一人の兵士がゴラムの首を抱えていた。

 ベッジはフーリエのところへ行くと言った。

「フーリエ様、ご命令を。 この上は被害を最小に抑え退却するしかございません」

「うむ、無念だがそれしかあるまい」とフーリエも同意した。

「全軍撤退! 南西に向え!」フーリエは命じた。 橙の兵達は、敵に塞がれていない南西めがけて一斉に走り出した。 もう戦意は完全に失われていた。


 セシウスの軍もバウロの軍も追撃を開始した。 それに合わせ、黒の軍勢も慌てて攻撃を開始した。 ここまで来て一度も敵と交戦しなかったら、緑のレギオンから怠慢だと思われることを恐れての事だった。 こうなると一方的な戦いだった。 3万の橙の軍勢の内、逃げることができたのは約半数だけだった。 こうして南部の戦いは、緑、藍、黒の連合軍の勝利に終わった。


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