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28-10 対峙

 10日後、シュルメ村

 無人になった村の中を、5万の軍勢が長い列を成して通り過ぎていった。 前部には兵士には見えない老人達が、よろめきながら歩いていた。


 「とっと歩け! 日が暮れてしまうぞ。 今日中に陣を設けねばならんのだぞ」 獣人の兵士が、鞭で片足を引きずっていた老人を鞭打った。 その老人はそのまま道端に倒れ込んだ。

「もう歩けません」 老人はかすれた声で訴えた。

「そうか、ならば死ね」 その兵士は剣を抜くとその老人の腹に剣を突き刺した。 老人はそのまま絶命した。

「他に歩けない奴はいるか?」 兵士は赤く血塗られた剣を振り上げて、人々を見渡した。 人々は青くなりながら必死に歩みを速めた。 一部の獣人兵は村に食料が残されていないか探し回った。


 全軍が山を下りた後、ムギンは編成を整えて更に南下させた。

「ムギン様、敵はここから更に10キロほど南の山に陣を構えております」とザンバ。

「良し、難民達を前面に押し立て行軍せよ。 緑の連中は途中にどんな罠を仕掛けているか分からないぞ」

「承知いたしました」


 緑のレギオン、本陣

 今回の戦場は、水晶のレギオンとの戦いの時よりも50キロほど南である。 森に近い西側の小高い山に本陣を置いた。 本陣の下に布陣したのは1万のレギオン兵と3千のエルム族、2千のグーツ族、3千のドラク族だった。


 「配置は大丈夫なのか」 俺はユウキに聞いた。

「ほぼ完了だ。 それより、人質になっている方の難民の方は大丈夫なのか。 それがうまくいかないと、全体の作戦そのものが崩れるぞ」

「ああ、大丈夫だ。 先ほどアンドレアスから連絡があった。 人質となっていた難民の移送を開始したので、その途中を襲って奪還しソドンへの移送は完了したそうだ」

「そうか、では明日は予定通りに」



 バール平原北部

 セシウスは平原の北端に陣を敷いた。 1万のレギオンの兵だった。

「他の軍勢の様子は?」とセシウスはスウゲンに聞いた。

「ブルカ族3千とエルビン族が配置につきました。 バウロと黒の軍勢も昨夜上陸しております」とスウゲン。

「では開戦は明日、予定通りということでよろしいですな」

「はい」


 バール平原、橙の軍勢の宿営地

 「ゴラム将軍、先ほど斥候が戻ってまいりました。 緑の連中はここから15キロほど北に1万の軍勢で布陣したようです。 その場所は北側と西側の大部分が断層の壁になっているそうです。 東側は2キロほど行くと海岸の断崖になるそうです」 ハイエナの獣人でゴラムの参謀のベッジが報告した。

「うむ、恐らく我らより兵が少ないので、我らに囲まれることを避けるために、そのような場所に布陣したのであろう」 ゴラムに向かい合って酒を飲んでいた黒人の男が言った。

「私もそう考えるが、油断は出来ませんぞ、フーリエ殿。 我らは3年前、この場所で煮え湯を飲まされましたのでな」とゴラムはそう言うと、右の鋼鉄製の義手を左手でさすった。

「何の、今回は倍の兵力ですし、同じ手にはかかりませんよ」とフーリエは静かに言った。

「ですが用心は必要ですぞ、フーリエ将軍。 奴らを1万の軍勢だけではないでしょう。 どこかに伏兵をおいているはずです」とベッジ。


 「今回の総指揮官は誰だ」とフーリエ。

「セシウスというサムライのようです。 王は北部のムギン様の軍に対処するため向こうに残ったようです」とベッジ。

「セシウスだと!」 ゴラムは目をむいた。

「ゴラム様、落ち着いてください。 どうか明日、セシウスが出てきても一騎打ちには乗らないでください」

「分かっている」そう言うとゴラムは、忌々しそうに義手でテーブルを叩いた。

「だが、3年前の借りは返してやる。 今回はこちらが完膚なきまでに叩き潰す」

「我らもおるのだ、油断さえしなければ負けることなど有り得ない」と言うとフーリエは杯を傾けた。


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