28-4 難民狩り
アンドレアス達は難民達とともに南下した。 ガレジオン山脈の途中に、昔12王が山を吹っ飛ばした場所があり、そこは山脈を越えるのが比較的容易であった。 そこを越えてオーリンの森に難民達を送ろうというのであった。
斥候が戻ってきて報告した。
「約20キロ先に橙の軍勢がいます。 その数約3万です」
「橙が緑のレギオンを攻めるという噂があったが、本当だったんだな」とケビン。
「それが少しおかしいのです」と斥候の兵が言った。
「どう言うことだ」
「奴ら、難民を集めているのです。 捕らえられた難民達は5万人ぐらいかと思われます」
「何だと!」とケビン。
「しかもその難民達を選別しているのです。 50代以上の男女、それと体の一部に障害があるような者達のグループと、比較的若くて健康そうな男女と子どものグループにです」
アンドレアスは少し黙って考えていたが、何か思い当たったように顔を上げた。
「まずいぞ、やつら坑道のカナリアにするつもりだ」
「どう言うことですか」とゴーセル。
「奴らは難民達を先に歩かせて進軍するつもりだ。 罠があった時に難民達が犠牲になって知らせてくれるということだ」とアンドレアス。
「ひでえな」とゴーセル。
「狙いはそれだけじゃないだろう」とケビン。 アンドレアスは頷いた。
(まずいぞ、カケル様に知らせなくては・・・)
アンドレアス達は進軍を止めた。 たかだか2千強の兵では何も出来ない。 一緒に来ていた難民の一団も更に後方へ戻らせた。 そして自身は斥候に案内させて状況を確認しにいった。
小高い丘の草むらから、アンドレアスは橙の進軍の様子を眺めた。 3万のマブル族の兵の前に、約2万の難民達が列を成して行軍していた。 老人などが多いように見えた。 難民達は逃げられないようにロープで繋がれており、希望を失い無気力に歩いていた。 もう一方のグループは近くの町に向っているようだった。
(もう一方のグループは人質か)
アンドレアスが戻ると、対応を協議した。
「難民を送るのは今無理だ。 どうする」とケビン。
「それよりも今奴らに連れて行かれた難民達はどうするんだい」とゴーセル。
「連れて行かれた者たちは、こちらではどうしようもない。 だがこちらに残された人々は解放する」
「襲撃するのか」とゴーセル。
「ああ、恐らく残される兵は多くないはずだ」
「だがその後はどうする、行き場がないぞ」とケビン。
「ソドンの要塞にこもる。 そして戦争の成り行きを見守る」
「なるほど、それしかないか。 ならばなおさらソドンの整備を急がなければならないな」
「ケビン、悪いが更に5百連れて、グラントと受け入れ準備を進めてくれ」
「分かった。 だがこちらが1千で大丈夫か」
「十分だ」
その夜、アンドレアスはジュリアンに念話を送った。
「ジュリアン、私だ聞こえるか」
「えっ、アンドレアス様ですか? どうされたのですか」
「緊急事態だ。 橙がレギオンに攻め込む事は聞いているか」
「はい、明日の会議でその件が話し合われます」
「いいか、ユウキに伝えてくれ・・・・」 そう言うと、難民の件を伝えた。
「承知いたしました」
「ありがとう」