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28-2 レッドローズ(4)

 3カ月ほど前、アストリアとボスリアの国境周辺

 アンドレアスの率いるレッドローズは5百人を超えていた。 国境を越えようとする難民も益々増えていた。 だがさすがに数十人規模の盗賊団は手を出さなかった。 そのかわりレッドローズがいないところを狙って、襲撃を行なっていた。 そのためアンドレアスは、グラントと兵を分けて姑息な盗賊達を狩っていった。


 そんなある日、国境近くの村でグラントと合流したときに、別の傭兵団が現れた。 兵数は約7百だった。 団長と思われる男が、4名の部下とともにアンドレアス達のところにやって来た。


 「奴らは“烈風の巨人”だ。 団長のゴーセル・マーシュは今売り出し中のイケイケの男だ。 関わらない方が良いだろう」とケビン。

「なあに自分が最強だと勘違いしている、世間知らずのヒヨッコだ」とグラント。

「まあとにかくまともに相手する必要はない」とアンドレアス。

「俺に任せてくれ」とグラント。


 農家の前で休んでいたアンドレアス達の前まで来ると、5人は騎竜を降りた。 いずれもいかつい一癖も二癖もあるような者達だった。 特に先頭の2メートルぐらいの男は20代後半の若者だった。


 「何の用だ、ゴーセル」とグラント。

「久しぶりだな、グラントのおっさん。 あんたもついにヤキが回ったようだな。 レッドローズなんて過去の名前に踊らされて。 大方、そこのカタリのおばさんにだまされたんだろう」 先頭の男が言った。

「誰がおばさんだ」とアンドレアスはその男を睨んだ。

「レッドローズの団長は10年も前の伝説だ。 かなり強かったらしいが、俺は周りの者達によって作られたものだと思っている。 それにまあ本当にそこそこ強かったとしても10年も経ったらロートルだろう。 こけおどしにしかならないだろう」

「フッ、ハハハ!」グラントもケビンも笑った。

「これだから、若い奴は世間を知らない。 自分の物差しでしか物事をはかろうとしない」とグラント。

「それほど言うなら、俺と勝負しろ」

「ゴーセル、悪いことは言わない。 よせ、死にたくなかったらな」

「何を寝ぼけたことを言っている。 そこまで言うなら何が何でも勝負を受けてもらう。 レッドローズの団長などたいしたことないということを俺が証明してやる」

 グラントがアンドレアスを見ると、めんどくさそうにため息をついた。

「小僧、お前程度など団長が相手するまでもない。 俺が遊んでやる」

「はあ~、グラント。 ついにボケ始めたか? 俺は弱い者いじめをする趣味はねえぞ」

「何を言うか、俺はまだお前ごときに負けはせん」

「よし、そこまで言うならやってやろうじゃねえか。 だが俺が勝ったら、このレッドローズは俺の傘下に入ってもらう」

「俺が勝ったらどうする」

「俺達はそのおばさんに従う」

「誰がおばさんだ!」


 グラントとゴーセルは剣を抜いて構えた。 ゴーセルの剣は通常の剣よりも10センチ以上長かった。 それを軽々と振った。 間合いの差が圧倒的にグラントに不利なことは明らかだった。

 先に動いたのはゴーセルだった。 体の大きさからは信じられないような俊敏さで、グラントとの間合いを詰めると腹を狙って突いてきた。 しかしグラントは冷静だった。 左脚を引いて体を捌くと剣をかわし、そのまま前に出て逆にゴーセルを突いた。 ゴーセルも右に飛び退くように何とか剣をかわした。 その後もゴーセルが豪剣を振るい積極的に攻めるが、グラントに剣を受け流された。


 戦いは10分ほど続いた。 半日以上続く戦場の戦いでも息が上がることなどないゴーセルが、肩で息をしていた。

「どうした、もう終わりか?」とグラント。

「卑怯だぞ、逃げ回りやがって」とゴーセル。

「戦術といって欲しいな。 もう良いなら終わりにしよう」


 グラントは上段から斬りかかるゴーセルの剣を、左手で握った剣で受け流すと、そのままゴーセルの懐に飛び込んだ。 そしてその勢いのままゴーセルのみぞおちに、右肘を入れた。 グラントは痛みに前屈みなったゴーセルの腕を抱えると、そのまま前方に投げ飛ばした。 グラントは仰向けに倒れたゴーセルの剣を握った右手首を踏みつけながら、剣を首筋にあてた。 ゴーセルの部下達も驚いて言葉が出なかった。


 「誰がロートルだって!」とグラントが笑った。

「クソッ、こんなの納得いかない」

 グラントは剣を首からはずし、足をどけた。 ゴーセルが上体を起こすと、グラントが顔を近づけて言った。

「良かったな。 あの方がお前の相手をしたら、お前は3秒と立っていられなかったぞ」 ゴーセルはアンドレアスの方を見た。 アンドレアスは興味無さそうにあくびをした。


 ゴーセルの傭兵団は、この日からレッドローズに吸収された。


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