27-6 ギルダの決断
黄のレーギア
「ジョエル、私は決めたぞ。 済まないが水晶と銀の王の所へ行ってくれ」とギルダ。
「水晶との同盟を維持する。 だが向こうの言われるままになるつもりはない」
「かしこまりました。 私にお任せください」ジョエルは微笑んだ。
水晶のレーギア、玉座の間
正面の檀上には二つの玉座が並んでいた。 右の玉座にはターニャが、左の玉座にはヒョウマが座っていた。
「本日は、ギルダ王の名代として参りました。 ギルダ王の口上を述べさせていただきます。 我々は水晶のレギオンとの同盟を維持します。 しかしそれはあくまでも独立したレギオンとしてです。 我々は水晶のレギオンが誠実に対等の関係を維持するならば、我々も決して盟約を違えず良好な関係を維持することを誓います」ジョエルはキッパリと言った。
「お前達はまだ自分達の立場が分かっていないようだな」とヒョウマがイラついたように言った。
「脅しには屈しません。 もしそちらが約定を違える時は、こちらも即時対応いたします」
「銀のレギオンに寝返るというのか」
「我らとしても不本意ですが、それはそちらの責任です」
「銀も属国扱いだぞ」
「そうはさせません」
「即時、攻めることも出来るのだぞ」
「その時は徹底的に抗戦いたします。 我らが申し出れば、銀は喜んで援軍を出すでしょう。 今、西は紫が勢力を伸ばしてきています。 長引けば、紫や金はそれを好機と攻め込んで来るでしょう。 その時にどう対応なさるおつもりか」
「クッ、ああ言えばこう言う」
「ははは、ヒョウマ様の負けです。 使者殿のおっしゃる通りです。 黄のレギオンが我らの良き友人であるだけでも良いではありませんか」 段下に控えていたクレオンが意見を述べた。
「ふっ、分かったそれで良い。 ギルダ王の気概、気にいった」
「ありがとうございます」
銀のレーギア、玉座の間
「この度は、我々に暖かい申し出をいただき誠にありがとうございました。 しかしながら、今回は水晶との盟約を今しばらく信じたいと思います」とジョエル。
「そんなもの、奴らがいつ破るか分からぬぞ」とバラス王不機嫌そうに言った。
「そうかも知れません。 しかしながら我らから破るような事はいたしません。 もし約束を違えるようであれば、我々はその時は見限るつもりでおります」
「そうか」
「我らは今回、水晶との盟約を維持する選択をいたしましたが、決してバラス王に敵対するつもりはございません。 銀とのお付き合いも今まで通りでございます。 お気になされている黒油につきましては、必要なだけ供給いたしますのでご安心ください」
「それはありがたい。 だが我らは水晶や赤のレギオンを信用しておらぬ。 黒油の供給に不安があるようなことは許容できない」
「バラス王、心配はごもっともですが、もしバラス王が我々に対して、非友好的な行動に出た場合、我々は黒油の井戸を即刻破壊します」
「何だと。 それは我々を脅しているのか?」
「とんでもございません。 ただ念のためにご忠告申し上げているのです」
「分かった。 今後ともよろしく頼むぞ」とバラス王は不満げに言った。
謁見終了後
「忌々しい奴らだ。 どうする、攻めるか」とバラス王。
「思いの外、意地を通しましたね。 少し様子を見られるのがよろしいかと思います。 水晶や白が盟約を破れば、その時はこちらに泣きついてくるでしょう。 とりあえず黒油は必要なだけ供給するというのですから、問題は無いわけですし、もし向こうが破ればそれを口実に攻めることができます」とシーウエイ。
「なるほど、それで良い」