27-5 王の会談(2)
二人が連れて行かれたのは、旧市街の中の少し落ち着いた場所にある邸だった。 かなり年期の入った、豪華な邸ではなかったがきれいに手入れされており、住みやすそうだった。 ここはグレアムの邸だった。 邸の庭の見える客間の前にはレオンとアビエルが、庭にはアドルとホーリー、エレインが、他にも門の近くにエルクとリースが警戒に当たっていた。
客間で俺とファウラが二人を迎えた。
「ようこそおいでくださいました。 私がカケル・ツクモです。 そして妻のファウラです」
「黄のレギオンの王、ギルダ・ラッシュです。 そしてサムライのジョエル・サンバーです。 本日はお会い出来て光栄です」
「いいえこちらこそ、どうぞおかけください」
「カケル王は若いとはお聞きしておりましたが、本当にお若いのですね」とギルダ。
「おかげで何も知らなくて、レーギアの者にいつも叱られています」
「いやいや、街の人々からの評判もなかなかのものでしたよ。 特に驚いたのは、王様への批判めいたことも自由に言えるということでした。 他の王都では有り得ないことです」
「人の口に戸は立てられないと言います。 言論を封殺するよりは人々の声を真摯に聞ける王でありたいとは思います」
「なるほど、周りの助言を素直に聞ける方なのですね」
「ところで、今回はどのような御用向きでこちらへいらっしゃったのですか」と俺。 ギルダは少し間をおいてから言った。
「私、一度カケル王にお会いして見たかったのです」
「えっ、何故ですか?」
「こんなことを言っては大変失礼なのですが、他の世界から来て、弱小といわれるレギオンの王になられたのに、次々と敵を破り今や大陸の中でも注目の勢力となっています。 どんなお方なのだろうと思っていたのです」
「ははは、ガッカリしたでしょう。 我々はまだまだ弱小ですよ、いつも攻められてどうして切り抜けるか必死です」
そこでギルダは真顔になり、少しためらいながら話し始めた。
「カケル王、もしも我々がカケル王に同盟を持ちかけたら、どうされますか?」
(やはり、それが目的か) 俺は慎重に言葉を選んだ。
「難しいと言わざるを得ません。 正直、この会談で同盟の話が出るかも知れないとうちのサムライが言っていました。 ですが、もし同盟を受ければ、黄を巡って即座に戦いが始まり、必ず巻き込まれると。 我々もギリギリの所で生き残っているのです」
「そうですか、そうですよね。 今の話は忘れてください」
その後は、取り留めのない話が続いた。 そろそろギルダが辞去しようと言いだした時、俺は言った。
「ギルダ王、今、王がすごく悩まれていることは知っております。 若輩の私が言うのも何ですが、今は辛抱の時だと思うのです。 私はこちらに来て思い知ったのですが、いくら理不尽だと思っても、自分の正義を貫こうとしても、力がなければ何もできないということです。 ですが自分の気持ちが折れなければ、やがてチャンスは必ず来ると思います。 今の状況もいつどうなるか分かりません。 私はそのうち、あなた方と一緒に戦う日が来るのではないかと思います。 ただ今はまだお互いにその時ではないのだと思うのです」
「確かに、その通りですね。 ありがとうございます、気持ちがスッキリした気がします」
二人は邸を出ると、宿に戻り荷物を受け取った。 そして飛竜を受け取るために、城外へ向った。
「とても正直な王様でしたね」とジョエル。
「そうだな、今は辛抱しながらチャンスを待とう。 さあ、帰るぞ」
「はい」