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25-6 水晶の新王

 ヒョウマはターニャのあごを指で持ち上げると、じっとターニャを見つめた。

「よくもメルデン様を殺したな!」

「よし、気にいった」 ヒョウマはそう言うと、ターニャに突然キスをした。

「・・・」 ターニャは驚いて目を見開いた。 数秒後、ヒョウ間が唇を話すと、ターニャが言った。

「な、何をする。 殺せ!」

「そうは行かない」 そう言ってヒョウマはターニャの体を担ぐと、隣の王の寝室に入っていった。


 「何をする、下ろせ!」 暴れようとするが体が動かせないターニャを、ヒョウマはベッドの上に放り投げた。 ヒョウマは仰向けにベッドに横たわったターニャの横に座った。

「今日からお前はオレのものだ」 そう言うと、ターニャのシャツのボタンに手をかけた。


 王のベッドに二人は横たわっていた。 ヒョウマが横を向いてターニャの顔を見た。

「一度くらい私を抱いたからと言って、私を支配出来るなどと思うな」 ターニャはヒョウマの顔に向って唾をはいた。 ヒョウマは怒りもせず、シーツで拭いた。

「出来るさ。 お前はこれから俺のサムライになる。 そしてお前が水晶の王になるのだ」

「何ですって! 私が言うことを聞くとでも思っているのか。 いっそひと思いに殺せ」

「お前は必ず俺の言うことを聞くさ」

(この自信はどこからくるの? レムの力で洗脳でも出来るというのだろうか)とターニャ。


「お前は疑っているな。 では聞こう。 お前がこれを断って、俺がお前を殺したとしたら、その後このレギオンはどうなると思う?」

「・・・・」


 「次の王は俺のサムライの中からと言うことになるだろう。 そうなった場合、このレギオンの者たちは素直に従うと思うか?」

「従わないだろう」とターニャ。

「要らない・・」 ヒョウマはボソリと言った。

「えっ・・・」

「そんな奴らは要らないと言ったのだ」

「・・・・」

「だから、従わない奴は殺す。 兵士だけでは無く、女も子どもも、老人もだ」

「何ですって、この王都には120万人もいるのよ」

「関係無い。 100万だろうと200万だろうと従わない奴らは殺す」

ターニャはヒョウマの目をのぞき込んだ。

(正気の沙汰じゃない。 だけどこの人の目は狂気の目ではない。 本気で言っている。 何か荒涼としたものを感じるのは何故だろう)

「そんなことをしたら、この都市は廃墟になってしまう。 何の意味も無いでしょう?」

「誰もいなくなったら、白と赤のレギオンから移住させる。 反意を持つ者達を無理に従わせるより、その方が余程いい」


 「だがお前が王になれば、レギオン内の反発は小さいだろう。 異教徒が王になるよりは従い易いはずだ。 お前が王になって俺に従うなら、信教も法制も慣習も特に口は出さない。 人々は今まで通り生活できるはずだ」

(クソッ、人々の命を人質に取って、脅している。 この男は粗暴な感じだが決してバカではない。 優秀な参謀が付いているのだろう)


 「さて、どうする? 俺はどちらでも良い。 だが王が死んだとなれば、軍は持たないだろう、じきこの都も落ちる。 そうなれば街中に殺戮と略奪と陵辱の嵐が吹き荒れるだろう」

(クッ、私に選択の余地は無いと言うことか)

「分かった、それだけは止めてくれ」 ターニャは唇をかんだ。

「そうか、そう言うと思ったよ」 ヒョウマは嬉しそうに言った。

「よし、そうと決まれば、もう一回楽しもう」 そう言うと、またターニャの胸に手を伸ばした。

「あっ、・・・」


 その時、ガーリンから念話が入った。

「ヒョウマ様、外が騒がしくなってきました。 今、扉を氷で固めていますが、破られるのも時間の問題です。 お急ぎください」

「分かった。 もう少し踏ん張ってくれ」

「承知いたしました」

「まったく無粋な奴らばかりだ。 残念だが時間がない。 済ませることを済ませてしまおう」 ヒョウマはそう言うと、ターニャの拘束を完全に解いた。 ターニャは一瞬逃げる事も頭をよぎったが、諦めた。


 二人は裸のまま、サムライの契約を交わした。 他に人がいたら異様な光景に映ったことだろう。 その後、ターニャは天聖球に受け入れられた。 ここに新王が誕生した。


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