25-5 メルデン王との対決
夜になってクレオンは再び城門を攻めさせた。 城攻めの夜襲は珍しい。 城壁の兵達は慌てた。
ヒョウマとガーリンはレーギアの上空にいた。 ガーリンは浮空術が使えないため、ヒョウマが背負いロープで縛ったのだった。 ガーリンは高いところが苦手で、恐怖におののいていたのだが、ヒョウマに顔を見られずに済んだ事だけが救いだと思っていた。 二人の下には高さの違う、3本の6角柱の建物が見えた。 これがレーギアだろうと思ったヒョウマは、建物の一つのベランダに降りた。
「王の居室はどこだろう?」 ロープをほどきながらヒョウマが言った。
「恐らく一番高い建物の最上階かと思われます」とガーリン。
「そうか、では行くか。 途中で誰かいたらそいつに聞こう」
メルデン王の居室
「また攻撃を開始しただと。 こんな冬の夜間に、何を考えている。 本気で落とせると思っているのだろうか」とメルデン。
「分かりません。 向こうの参謀は通常は取らない策ばかり取っています。 この夜襲にも他に意味があるのかも知れません」とターニャ。
その時、扉の外で何か大きな物音がした。 そして静かになると、扉が静かに開いた。 そこには防寒着に身を包んだ二人の見知らぬ男が立っていた。
「何者だ!」とメルデン。
「あんたが王様かい? 俺は白の王だ」とヒョウマ。
「そうか、これが狙いか」とターニャ。
ヒョウマは部屋の中を見回すと、一方の壁際に置いてあったローボードの上に、白く輝く金属の箱に入った透明の玉を見つけた。 それはまばゆい光を放っていた。 ヒョウマはニヤリと笑った。
「ビンゴ! ガーリン、後は俺がやる。 邪魔者が入らないように外を押さえていてくれ」
「承知いたしました」 そう言うと、ガーリンは部屋を出て扉を閉めた。
「天聖球を奪いに来たというのか? 愚か者が、神罰が下るぞ」とメルデン。 だがメルデンは椅子から立ち上がる様子は無かった。
「死ね!」 突然、ターニャが右手を伸ばすと、ヒョウマを雷撃が襲った。 ヒョウマは一瞬硬直したが、何も無かったようにターニャの方に向いた。
「痛いじゃないか、お前はサムライか? なかなかやるな。 だがお前は今関係無い。 動くな!」 ターニャはヒョウマに見つめられ、そう言われると、急に体が硬直し動けなくなった。
(何だこれは? 暗示にかかってしまったのか?)
「さて、これでサシで話ができるな」とヒョウマ。
「バカめ、ここで息の根を止めてやるわ」 そう言うと、メルデンは立ち上がり、椅子の裏に隠してあった剣を抜いた。 そして剣先をヒョウマに向けた。 ヒョウマは慌てる様子も無く、頭を掻いた。
「ヤレヤレ、俺はあんたには何の恨みも無い。 だからあんたが素直に俺に降伏すれば、命は取らないつもりでいたが、どうやらその気は無いらしい。 ならば遠慮無く命をいただく」
「ほざけ!」 メルデンは剣で斬りかかってきた。 しかしヒョウマの方が一瞬早かった。 ヒョウマは右手の指先をメルデンに向けると“ビシッ”という音とともに、メルデンの額に1円玉ほどの穴が空いた。 メルデンは驚いたような表情をしたが、うつろな目をしてそのまま前に突っ伏した。 額から流れ出た血が、絨毯を赤く染めた。
「メルデン様!」 ターニャが叫んだ。 体は動かすことが出来なかったが、声を出すことは出来た。
「さて、今度はこっちか」 ヒョウマはターニャの方へ向き直った。




