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25-3 赤と黄の戦い

 赤の王都を発してから1月半後、ようやく黄の王都に到着した。 グラスは丸い王都の城壁から3キロほど東の荒野に布陣した。 石の城壁は高さが20メートルほどだった。 黄のレギオンは王都内から出てくる様子はなかった。


 戻ってきた斥候が報告した。

「水晶の援軍はまだ見えません。 到着まではあと3、4日かかると思われます」

「そうか、分かった」 そう言うとグラスは、その日はそのまま攻めなかった。 黄のレギオン軍は堅く守って、城壁から外には出てこなかった。


 グラスは次の日、キラウに命じて1万の兵で東の門に対して攻撃を開始させた。 黄の兵達は、城壁の上から弓矢や石で攻撃し、城門を守った。 キラウは半日も攻めると諦めて兵を退いた。 そして翌日も同じような攻撃を繰り返した。


 黄のレーギア

 「どうもおかしいですね」 ジョエルが言った。

「どうおかしいのだ」とギルダ。

「やる気が無いというか、本気で攻め落とそうとしているとは思えません。 敵も水晶の援軍がこちらに向っていることは知っているはずです。 ならば援軍が到着する前に落としてしまおうと必死になるはずです。 ですが、攻めるのも一部ですし、半日で諦めてしまっています。 そもそもあの軍勢は、兵数を多く見せようとはしていますが、どう見ても3万位しかいません」

「どう言うことだ?」とルーク。

「つまり、赤の軍勢の目的はこの王都を落とすことでは無いと言うことです」

「では何がしたいのだ?」とギルダ。


 ジョエルは腕を組み、手で顎をさすりながら考えていたが、突然ハッとしたようにギルダを見つめた。

「そうか、そう言うことか。 赤の目的は、水晶の援軍です」

「どう言うことだ?」とギルダ。

「赤の目的は、水晶の軍をこちらに引きつけることです。 本当の狙いは水晶のレーギアでしょう」

「何だと!」とルーク。

「恐らく、今頃は白と赤の連合軍が水晶の王都を攻めているでしょう」

「それは本当なのか?」

「明日、こちらから打って出ましょう。 それで分かります」


 次の日の早朝、ルークが1万の兵を率いて打って出た。

「何だと、向こうから攻めて来たと! トウカ、こちらも1万で相手をしてやれ。 だが守る事を主にするのだ。 ムキになるなよ」とグラス。

「はっ!」そう言うとトウカは幕舎を出ていった。


 ルークの率いる歩兵に対して、トウカは弓兵で斉射を浴びせた。 トウカの兵達は硬く陣を守り、積極的に前には出なかった。

(ジョエルの言うとおりだな。 こちらを撃破しようという気が感じられない)

 弓による矢の雨を受けたルークは、兵に撤退の命令を出した。 戦う気のない所へ無理に攻めて、兵を無駄に損耗する必要はないと判断したのだった。


 ルークはギルダの所へ戻ると報告した。

「敵にこちらを打ち破ろうとする意志は感じられませんでした」

「うん、ジョエルの言うとおりと言うことか。 ジョエル、ならば後はどうする」

「はい、放っておけばその内勝手に引き上げるでしょう。 恐らくは数日の内に。 我らは城門を堅く守って、推移を見守るしかありません」

「水晶の援軍にこのことを知らせた方が良いのではないのか」とルーク。

「そうですね。 ですがその話をしても信じないでしょう。 それにもう今頃、水晶の王都への攻撃は始まっているはずです。 今から援軍がとって返しても、間に合わないでしょうね」


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