25-1 ヒョウマの決断
白のレーギア
ヒョウマの執務室にクレオンが入って来た。 ヒョウマはガーリンと話し中だったが、かまわずクレオンは言った。
「ヒョウマ様、水晶のレギオンが緑のレギオンに敗れたようです」
「何だって! もう少し詳しく聞かせてくれ」
「はい。 水晶の総勢12万の軍勢に対して、緑、藍、青、三つのレギオンと各種族の連合軍約5万がガレジオンとブラブ両山脈の間で開戦し、水晶は撃破されたようです」
「倍以上の兵力がありながら、それでもやられたと言うのか? 水晶が弱いのか、カケル達が強いのか」
「カケル王の連合軍が強いのだと思います。 単なる寄せ集めの軍ではありません。 ユウキと藍のスウゲンと言う者が戦略を立てセシウス達がそれを実行しているのだと思われます」
「ユウキ? あの王選抜のユウキか?」
「そうです」
「それで、今度は水晶を攻めて良いのか? お前の言うとおり水晶が敗れたぞ、これは好機ではないのか?」
「それはそうなのですが・・・」
「何か煮え切らないな。 何が問題なのだ?」
「問題は幾つもあります。 まず兵力です。 水晶はまだ7万から8万の兵を有していると思われます。 こちらは赤を加えても9万です。 しかも黄のレギオンと同盟を結んでいます。 黄の兵力は2、3万と思われますが、それも考慮しなければなりません。 恐らく総力戦でも五分五分でしょう。 それで仮に勝ったとしてもこちらもかなりの損害になると思われます。 圧倒的な勝ち方をしないと、すぐに紫に攻め込まれたり、赤が銀から攻められたりするでしょう。 なので賭けなのです。 私にはそんな作戦は提案出来ません」
「分かった。 では必ず勝つ方法を考えろ。 それを聞いた上で判断する」
「無茶な!」
「無茶でも、無謀でも何でも良い。 我々もこのままではじり貧になるぞ。 とにかく策を出せ」
「承知いたしました」 クレオンは渋々承知した。
クレオンは苦悩した。 どう考えても明るい展望が見えない。 色々な制約がある中でどうして勝利の道筋を見つけ出せば良いのか。
(これが俺の限界か? ユウキならば策を見つけ出すことが出来るのだろうか)
クレオンは発想を逆転してみた。 どのような形の勝利が望ましい形か。 クレオンは三日三晩、寝食を惜しんで考えて結論を出した。
4日目の午前、会議が開かれた。 ヒョウマ、クレオン、ガーリン、グラスの4人だった。 クレオンの目の下には隈が出来ていた。
「大分苦戦したようだな」 ヒョウマは笑いながら言った。
「はい、ですがようやくこれならと思える策が出来ました」
「では聞こうか」
クレオンは策を説明した。
「ガーリン、グラスどう思う」とヒョウマ。
「良いと思います」とガーリン。
「そうですね。 全体的にはこれしかないと思いますが、このように向こうが果たして動くかどうかが懸念されます」
「ヒョウマ様、新たな情報では橙が金の傘下に入ったと言うことです。 これは西部がほぼ紫のレギオンによって支配されたことを意味します。 このことから考えても、逆に機会は今しかないと言えます。 ですがこれが失敗したら、我々は危機的な状況を迎えます」とクレオン。
「分かった。 いいだろう、決行だ。 進めてくれ」
「承知いたしました」




