24-3 新生アテン島
翌日、俺達は黒の王都を後にした。 俺達の飛空船は進路を西に取った。 と言っても行き先はセントフォレストではなく、南のアテン島だ。
王子のエルクは、俺のサムライとなった後、警護班に入っていた。 俺の警護にそんなにサムライは必要ないと言うことで、スウゲンやバウロについて、海軍について学んだらどうかと提案したのだが、聞き入れなかったのだった。
「いいえ、私はカケル王のもとで、直接色々と学びたいのです」とエルクはキッパリ言ったのだった。
(俺についていても、教えられることなんか何もないぞ。 俺の失敗を見て反面教師にしたいと言うことか?)
「エルクの言うことも分かりますね。 カケル様の側にいるのが一番いろんな経験が出来ますからね」とアドル。
アテン島の王都に着くと、スフィン王自ら出迎えた。 王は俺の前に跪くと臣下の礼をとった。
「スフィン王自らお出迎えいただき、恐縮です」
「何の、当然のことです」
王宮について、一息ついたあと、スフィン王との会談となった。
「橙のその後の動きはどうですか」
「我らがカケル王の傘下に入った事を宣言すると、動きは取りあえず止まっております。 やはり効果は絶大ですね」
「いやいや、対応を検討中なだけで、戦争覚悟で仕掛けてくるかも知れません。 油断は禁物ですよ」
「そうですね、承知いたしました」
「こちらの対応策は、現在どうなっていますか」
「島の西側の数カ所に監視所を設け、船の接近など警戒に当たっております。 それと現在島の3カ所に港を整備中です。 海軍の創設のため、次男のカルアン他をスウゲン殿の所に派遣中です」
「分かりました。 人々の暮らしの方はどうですか」
「大分落ち着きました。 島が動かないことに最初はすごく違和感がありましたが、ようやくなれたようです。 食事も我らは元々魚を食する習慣はなかったのですが、少しずつ食する者が増えております」
「そうですか、何か困っていることはありますか」
「とりあえずは大丈夫かと考えております。 何かありましたら、その時にはまたご相談させていただきます」
翌日は、エルクが島の各所を案内してくれた。 それまで何度か島に来ていたが、その時には島の様子を見るどころではなかったのである。 よく見るとのどかな、きれいな島だった。 広がる農地に所々に点在する森、高い山はないが低い山が幾つも背骨のように連なっていた。 当たり前なのだが天空島と似た雰囲気があった。 スフィン王はミーアイ王と完全に和解し、現在では両島の島民が行き来しているとのことだった。
村や町を通ると、ここでも俺達は歓迎された。 俺達がこの島を存続させるために尽力した事が知れ渡っているということだろう。
島の南端には、ドラゴン達が島を引いた時のアンカーが残されていた。 鎖は撤去されていたが、アンカーはこの島で起こったことを永く語り継ぐための証拠として残したのだった。 アンカーの側には石板が設けられ、この時の様子がドラゴンの絵とともに彫られていた。
「この岬はドラゴン岬と改名されました」とエルク。
グレンは石板に描かれた一際大きなドラゴンに“竜王グレンバロウス”と書かれているのを見つけ、恥ずかしそうな顔をした。
俺達はアテン島に3日滞在した後に、緑のレーギアに戻った。