3-12 襲撃(2)
セシウスと別れた後、兵摩たちは2度襲われた。 一度目はセシウスと別れた翌日、砂漠の地中から10メートル近い巨大なムカデの群れに襲われた。 しかし兵摩は慌てることもなく、冷静に対処していた。 動きが素早いので、ムカデの体液を凍らせ動きを止め、自ら“レムガン”と名付けた念弾で次々と仕留めていった。 もちろんレオンやリースの戦闘力も驚異的で、通常なら剣も通じないような外皮を一刀両断していくのだが、兵摩の前ではかすんでしまっていた。 まるで兵摩にとっては、良い実験機会ぐらいにしかとらえていないようだった。
(ヒョウマは、どんどん進化していく、応用力が優れているのだ。 教えていないのに、火の属性の陰の術も自分で考えて実現してしまう。 どんなに才能がある者でも、何年もかかってしまうようなことを、この10日ぐらいで体得してしまった。 おそらくヒョウマのレムは大陸の有名なレム使いや、冒険者にも引けを取らないレベルになっているだろう)シローネはそう評価していた。
「気にいらんな」レオンは、退治し終わったムカデの死体を見ながら、リースに言った。
「それは、謎の連中の仕掛けでムカデに襲われた事を言っているのか、それともいいとこ全部ヒョウマに持っていかれたことかい」とリースが笑いながら言った。
「両方だ」憮然とした顔で言った。
2度目は、緑のレギオンのテリトリーであるオーリンの大森林の手前にある町で、酒場で食事をしようとした時だ。 レオンが豚肉と野菜のスープに口をつけた時に、味の異変にすぐ気がつき床に吐き出した。 毒が盛られていたのだ。 飲み込んでいなかったので、大事には至らなかったが、犯人は分からなかった。 給仕の女は泣きじゃくり、主人はひたすら謝ったが、自分たちは無実だと言い張った。 敵は力ずくでは敵わないと判断し、こんな姑息な手段に出たのだろう。




