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22-7 激闘(2)

 フィーゲルのボーク部隊は撤収した。 戦闘が混戦となってきたからである。

 敵の先頭はこちらの本陣近くまで押し寄せてきていた。 柵に近づく兵に対して、エルム族、ドラク族が次々に矢を射かけた。 それでも止まらず柵を越えてくる敵に対して、ブルカ族が槍で攻撃した。 ここが抜かれれば本陣まで到達されてしまう。 皆、ギリギリの所で踏ん張っていた。


 戦場の東、中盤

 セシウスの騎竜部隊は、その機動性を十分に活かせなかった。 菓子に群がるアリのように敵兵が密集してきたのだった。

(クソッ、勢いが強すぎる。 こちらが囲まれてしまうぞ) そうセシウスが思った時、背後からバズーカの発射音が幾つも聞こえた。 砲弾は敵軍のど真ん中に着弾し、多くの敵兵を吹き飛ばしていった。


 セシウスはこの期を見逃さず、槍を大きく左から右になぎ払った。 すると前面の多くの兵が後方へ吹き飛ばされた。

「今だ、一旦下がり体制を立て直せ!」 セシウスは命じた。 500の騎竜部隊は素早く下がった。


 「さて、これからは俺達の見せ場だ。 行くぞ!」 バウロは兵達に命じると、騎竜部隊を追ってくる敵に向って、槍を握って先頭を駆けた。 その後に5千の海兵部隊が続いた。 そして同時にバウロの部隊の隣をゲランとガーリン、二人の部隊長が5千の兵を率いて突撃を開始した。


 それから戦闘は1時間以上続いたが、膠着状態に陥っていた。 水晶の兵達は、最初の勢いはなくなってきた。 薬の効果が切れてきたのだろう。 だが味方の兵達にも疲れが見られた。


 その時である、戦場の東側から新たな軍勢が現れた。 アビエルが率いるアデル族だった。 アデル族の兵達は雄叫びを上げながら、バウロの部隊の横に攻め入った。 そしてほぼ同時に、今度は西側の斜面からアドルの率いるマブル族が咆哮を上げながら戦場に突入した。 これにより戦場の均衡は崩れた。 次第に水晶の軍は崩れ始め、後退を余儀なくされた。


 これを見ていたターニャは、アンゲルとブラスの部隊が壊滅した事を確信した。

「メルデン様、別動隊は壊滅したようです。 私の作戦ミスです。 どうかここはお退きください」

「何を言うか。 我々の方が兵力も勝っているのに、何故あんな寄せ集めに勝てない。 絶対に撤退など出来ない。 神の軍が同じ相手に2度も負けるなど断じてあってはいけないのだ」

「しかし、このままではこの本陣も崩れ出すのは時間の問題です」

「このうえは、私自らの手であの若造を葬ってやる」 メルデンは輿を上空に浮かせると、戦場を越えて南に向った。 その様子を見たクリフは驚いた。

(メルデン様、何と無謀な・・・) クリフは浮空術で空中に浮かび上がると、メルデン王を追った。


 こちらに向って、輿のような物とその側に一人の兵士が、飛んで来るのが見えた。

「あれは、水晶の王ではないか?」と俺。

「そのようですね」とスウゲン。

「どうして?」

「和睦の話ではないでしょうね。 いいですか、決して一騎打ちなど受けないでくださいよ」とユウキ。

「お任せください」 エルクがそう言うとエルビン族の兵達と共に空中にはばたき、メルデンの輿の前を塞ぐようにした。 更に下の兵達が、銃や弓で撃とうと身構えた。

「撃つな! 通して良い」 俺は命じた。


 やがて輿が俺達の前まで10メートルほど前まで来ると、空中に停止した。

「緑の若き王よ、我と直接前回の決着をつけよう」とメルデン。

 俺はユウキの顔を見た。 ユウキは大きく首を横に振った。

(だよな、だが断っても、向こうはそれで退かないだろう)

「フウッ」と小さくため息をつくと、メルデン王に向き合った。


 「いいでしょう。 ただし条件があります。 私が勝ったら、すぐに全軍撤退してください」 俺がそう言うと、ユウキとスウゲンが諦めたように下を向いた。

「ずいぶん自信があるようだな。 良いだろう。 私が勝ったら、緑のレギオンは私に従ってもらう」

「なっ、それでは不公平です」とスウゲン。

「神の代理人である私に、条件をつけること自体が僭越にすぎるわ」

「いいでしょう」と俺。 だんだんむかついてきた。


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