22-6 激闘(1)
俺とグレンは速攻でゴーレムに向った。 ゴーレムは太い土の塊の腕を振り上げると、俺に殴りかかった。 それを空中で方向を変えかわすと、胸の5角形の赤い石めがけ近づき、右の拳を握った。 思いっきり赤い石を殴りつけると、石は砕けゴーレムの胸に大きな穴が空いた。 するとゴーレムは獣の咆哮のような悲鳴を上げると、そのまま動きが止まった。 目の部分に灯っていた赤い光が消えると、ゴーレムは体を維持出来ずに、崩壊しだした。 そしてそこには巨大な土の山ができた。
グレンは、俺の隣のゴーレムに攻撃を加えた。 近づいて前足で赤い石を破壊しようとしたが、左右の腕の攻撃のため近づけなかった。 イラついたグレンは、大きく息を吸い込むと、大きな炎を吐き出した。 ゴーレムは太い左腕で庇ったが、腕は赤く融けて落ちた。 そのまま赤い石もろとも胸も大きく融けてしまった。 そのゴーレムも次の瞬間には土の山と化した。
その後も俺とグレンで次々とゴーレムを倒していった。 俺が5体、グレンが4体、戦車が放った砲弾がたまたまマグレで赤い石に当たり、1体が破壊された。
「クソッ、またあの小僧とドラゴンか。 この顔の傷の恨み忘れてはおらぬぞ。 今度こそ余が自ら息の根を止めてやる」とメルデン。
「いけません、メルデン様。 ここはこのまま兵を進めましょう。 通常兵力だけでも勝てます」とターニャ。
「ムムム、忌々しいがもう少し様子を見るか」
俺とグレンが本陣に戻ると、ファウラが駆け寄って来た。
「カケル様、お怪我はございませんか?」
「大丈夫です」
「カケル様、奴らの本体が攻めて来ましたよ」とスウゲン。
「では、予定通りにお願いします」
「承知いたしました。 ユウキ殿、ではやりますか」
「はい」
白い歩兵達が剣や槍を持って駆けてきた。
「構え! 撃て!」 緑のレギオンの兵達が一斉に銃を撃った。 ユウキは密かにバズーカだけではなく、銃の製造も進めていたのだ。 勿論、職人の技術レベルは、到底銀のレギオンには及ばなかった。
それに合わせて本陣の裏から、ボークに乗った青のレギオンの兵団が空中に浮かび上がった。 フィーゲルの号令のもと、雁の群れのように編隊を組むと、敵の兵団の上空を飛行し、敵兵を攻撃していった。
水晶の白い兵達は、次々と倒れながらも、進撃は止まらなかった。 更に本陣に近づいて来た兵達に、エルム族が矢を射かけた。
戦場の東側、山の南側からはセシウスが騎竜部隊を率いて乱入してきた。 それと同時に、西側の山の斜面からはトウリンが率いる1万の歩兵が攻撃を開始した。
これらの同時攻撃によって、水晶の軍の前列軍はズタズタになった。
「アンゲルとブラスはどうした? 伏兵を排除したのではなかったのか」
「裏をかかれたのか?」ターニャは唇をかんだ。
(アンゲル殿もブラス殿もやられてしまったのか? まずいぞ)
「ターニャ、兵を神兵化させろ!」とメルデン。
「承知いたしました」
しばらくすると、水晶の兵達の一帯に白い煙と甘いような匂いが漂った。
戦場が一変した。 水晶の兵達が異様に興奮状態になり、目が赤く充血していた。 さっきまで押され気味だった兵達が別人のように、どう猛な獣のようになってしまった。 斬られても、矢が当たっても何事もなかったように突き進んで行った。
両脇から攻撃をした、トウリンの部隊もセシウスの部隊も押し戻されていった。 緑のレギオン軍の損害も大きくなってきた。
(こいつ等は厄介だぞ)とセシウス。
 




