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18-11 対戦車戦

 戦場の無数の穴は無秩序に掘られたものでは無かった。 横4メートル幅1.5メートル深さ1メートル、掘った土は前面に盛り上げた。 それを戦場に横位一列に等間隔に掘ったのだった。 そしてその10メートルほど後ろに、穴と穴の間の所に来るようにずらして同様に穴を掘らせた。 つまりこの穴は、敵の銃撃から身を守るための穴、いわゆる塹壕である。


 その穴から身を乗り出したのは、エランの部下達だった。 二人一組になり、一人が肩に筒を担ぎ、もう一人が砲弾を装填した。

 飛竜部隊の兵達は一斉に塹壕から体を乗り出し、バズーカの狙いを戦車に向けた。 そして一斉に砲弾を発射した。 無数の発射音と白煙を残し、砲弾が次々と戦車に襲いかかった。 そして次々と爆音と共に戦車の砲塔のある上部が吹き飛び、そこには煙を上げながらスクラップとなった戦車の残骸が残った。 中には当たらずに戦車の砲塔の近くをかすめて行く砲弾も何発もあった。 しかし、幸運にも生き残った戦車達も、すぐに後列のバズーカの標的にされた。 戦車側は為す術が無かった。 距離が近すぎて砲を撃つ事が出来ず、慌てて上に登り機銃を撃とうと試みた兵もいたが、間に合わなかった。


 シーウエイは驚いた。

(何だ、あれは。 いつの間にあんな物を用意した。 まてよ、あれは前に見たことがあるぞ。 そうだ、初代王が残された図面の中に、たしかアレに似た物があったような気がする。 確か、そうだバズーカ砲だ。 クソッ、やられた。 ユウキは向こうの世界から来たと言うことだから、戦車も知っているし当然対処法も知っていておかしくないのに・・・)


 シーウエイは即座に命令を発した。

「戦車隊は即座に左右に回り込め。 歩兵を前に出して、モグラどもをたたきつぶせ!」

 1列目の戦車はほぼ壊滅したが、2列、3列目の戦車達が一斉に左右に分かれ、塹壕群を回り込もうとした。


 その時、戦場の東側から無数の砲弾が飛んできて、走行している戦車は次々と被弾していった。

 東から攻撃したのは、フィーゲル率いる青のレギオンの兵達であった。 フィーゲルとその部隊6千は昨夜の内に、ボークと呼ばれる一人乗りの飛行物体に乗り、戦場の東側に降下し、林の向こう側に潜んでいたのだった。 彼らがバズーカ砲を携行していた訳は、時間的に緑のレギオンでの製造が間に合わないと判断し、青のレギオンに製造を協力依頼していたのだった。

 更にそれを合図にするかのように、東の林の向こう側から、無数のボークが空に浮かび上がり、塹壕の兵を攻撃しようとする銀の歩兵達に攻撃を開始した。


 銀の歩兵達の攻撃が怯んだ隙に、塹壕にいた飛竜部隊の兵達は塹壕を飛び出し、西側を迂回しようとした戦車を攻撃した。 これら一連の攻撃によって、100両合った戦車の9割は失われた。


 銀のレギオン軍が大きな混乱をきたした頃、黒のレギオンの兵がようやく到着し、銀の兵達に襲いかかった。 黒の兵達は剣や槍を使って、次々と銀の兵士を打ち倒していった。 銀の兵士達は、白兵戦になってしまい銃を撃つことが出来ず、銃口の先についた銃剣で戦うしか無いため、黒の勢いに押され始めた。


 この時点でエランの飛竜部隊と、フィーゲルの部隊は撤収した。 このような乱戦状態では、どちらも攻撃出来ないからだった。 彼らの役目はここまでであった。


 「うまくいったようですね」 俺はザウロー王の本陣で戦況を眺めながら言った。

「カケル王のおかげです。 後は我々に任せてください。 それより、西へ向っている銀の部隊がいるはずですが、そちらに居られなく大丈夫なのですか」とザウロー。

「私はいつも、戦闘が始まってしまうとやることが無いのですよ。 向こうはユウキやトウリンが居りますので大丈夫です。 それに今回は勝敗を分けるのはこちらの戦場です」

「カケル王は、有能な臣下が多くて羨ましい」

「恐れ入ります。 私はいつも彼らに扶けられております」


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