18-10 開戦
「カケル王、良くおいでくださいました」 ザウロー王はそう言いながら、俺達を迎えてくれた。 そして王の幕舎に迎え入れられた。
「ザウロー王、明日はどのように戦われるおつもりですか」
「正面からぶつかるだけです」
「失礼ですが、それでは勝てないでしょう。 よろしければ我々の案を聞いていただけますか」 そう言うと、ユウキから聞いている計画を伝えた。
「そんなことが可能なのですか」 ザウローは驚きを隠さず言った。
「はい、今夜密かに届きます」
「それはこちらとしても、ありがたことですが、なぜそこまでなされるのですか」
「我々自身のためです。 黒のレギオンが銀のレギオンの支配下になったらもう我々には勝てなくなるでしょう」
「分かりました。 感謝いたします。 カケル王のご提案を全面的に受け入れます」
「ありがとうございます。 それとユウキが気にしていたのですが、王都内の方はどうなっていますか」
「レジスタンスの事ですね。 ユウキ殿の言われたとおり、奴ら直前に軍を投入して一斉に捕縛しようとしてきました。 ですがこちらも、分散してしかもアジトを次々に替えて居場所を特定させないようにしております。 予定通り行動できます」
「そうですか、それは良かった」
「竜王様にもおいでいただき感謝いたします」 ザウローはグレンに対して礼を言った。
「礼を言われるようなことはしていない。 ボクはただカケルについてきただけだ」
「カケル王、細かい所までご配慮感謝いたします」
真夜中に3隻の飛空船が到着した。 中からはエランとエランが率いる飛竜部隊(特殊部隊)500名が現れた。 そして木箱に入った大量の物資が降ろされた。
それに合わせ、ザウローは未明から戦場の指定した場所に無数の穴を掘らせた。 それは夜明け前には完成し、各部隊は配置についた。
夜明けと共に、シーウエイが3万5千の歩兵と100両の戦車を率いてやって来た。
「なんだ、あの無数のモグラの穴のようなものは? まさかあの穴に戦車の車輪配置がはまって動けなくする作戦か。 甘いな、ユウキたちの作戦がこの程度なら、ガッカリだよ」 シーウエイは戦車を前面に横3列に配置し、モグラの穴の100メートルほど手前まで進めた。 穴の背後の黒の陣までは射程が微妙な距離だったからである。
ザウローは敵の配置に満足すると、俺の顔を見た。
「それでは始めますか」
「そうですね、頃合いでしょう」
「突撃だ!」 黒の王の命令により辺りに甲高い角笛の音が響き渡った。
黒の兵達は一斉に走り出した。 敵の遠間からの攻撃に対抗するには一気に距離を詰め、白兵戦に持ち込むしかなかった。 士気は高かった、“我々にはドラゴンがついている”その思いが、彼らのテンションを上げていた。
最前列の戦車隊が黒の陣に向けて照準をつけていると、モグラの穴に異変があった。 穴から一斉に人が現れたのだった。




