18-9 出兵
森の東のクラマ砦(大きい方の川の名前がクラマ川と言うことから、クラマ砦と名付けられた)にマブル族他計6つの種族の兵が続々集結してきた。 グーツ族やドラク族も出兵していた。
各種族は、当初今回の出兵には難色を示していた。 と言うのも今回は攻め入られたのに対する防衛戦ではなく、出征に当たるからである。 カケル王との約束では防衛戦に限るとなっていたからである。 しかも今回は、先に戦った黒のレギオンを助けるためのものであり、どの種族も助ける義理はないと考えたからであった。
そこで俺は各種族を回って頭を下げて、説得を行なったのだった。
「今回は確かに黒のレギオンを救う戦いである。 しかし2、3年後の大戦を回避するためのものである」と、俺は今回黒のレギオンを救わなければ、近い将来銀と黒の連合軍を相手に戦わなければならない事を説明した。 それを聞くと各族長は言葉が出なかった。 さらに今回の出兵費用を、レギオンが負担することで、ようやく同意を得ることが出来たのであった。
トウリンの率いる第2歩兵部隊2千と各種族の兵1万8千の計2万が砦を出て、東に進軍した。 俺もこの部隊の中にいた。 黒の王都までは、10日以上かかる見込みだ。
ジブラの臨時レーギア
ザウローは出兵の準備を進めていた。 各都市に兵を集結させるように命じた。 集まった兵を率いてジブラからの出兵は10日後になるだろう。
現在ジブラにいる兵は、生き残ったレーギアの正規兵、約2万とジブラでの志願兵5千である。 他の都市や村から2万5千の兵が集まることになっていた。
10日後、ザウローは5万の兵を率いて、ジブラを発した。 ザウローの顔に笑みは無かった。 ザウローはこの戦いに文字通り命をかけていた。 最後は単身で斬り込む覚悟でいたのだ。
更に3日後、王都まで10キロの距離でザウローは進軍を止めた。 この平原で戦うつもりなのだ。
(兵は5万だが、恐らくまともにぶつかっては勝てない。 問題はあの戦車と銃だ。 こちらが白兵戦に持ち込む前に、戦車の砲弾と銃撃により多くの兵が倒されるだろう。 それと士気の問題だ。 生き残った兵達は、あの戦車の恐ろしさを知っている。 恐怖心が無いと言えば嘘になるだろう。 それに対して志願兵達はその恐ろしさを知らず、なめているところがある。 どちらもまずい状況だ、これを打開する策が必要だ。 スウゲンやユウキは何やら考えがあるようだが、この前は言わなかった。 私を信用しないわけではないだろうが、情報が漏れる事に慎重なのだろう)
野営の準備をさせている時に、北西から2つの物体が飛んで来た。
兵達が騒ぎ出した。 それもそのはずである、飛んで来たのは人と黒いドラゴンだったからである。
数時間前、緑のレギオン軍
ユウキがやってくると、言った。
「カケル様、お願いがございます。 グレンと一緒にザウロー王の陣まで飛んで行っていただきたいのです」
「何故だ」
「作戦を伝えるためです」
俺はユウキの顔を見つめた。
「分かった。 だがグレンについては本人の意志に任せる。 グレンどうする。 ユウキはお前に、黒の兵達に姿を見せて欲しいと言っているのだ、ドラゴンの姿を」
「なぜ?」
「向こうの兵達は一度敗れている。 それに寄せ集めの兵達だ、士気はそれほど高くないだろう。 そこでお前の姿を見せれば、ドラゴンも味方してくれていると言うことで兵の士気が上がるとユウキは考えているのだ」
「恐れ入ります」とユウキ。
「だが、それはお前を間接的に戦に利用するということになる。 だからあんな言い方をしたのだ」
グレンは俺の顔を見ていた。
「カケルがそうして欲しいなら構わない」
「グレンに強制したくはない。 だがこれによって、明日から始まるであろう戦いに少しでも有利に働いて、少しでも死ななくて良い命が増えるのなら私はそうしたい」
「分かった。 ボク行くよ」
「そうか。 では、行こう」




