18-4 謀議
俺は会議の後、自分の居室でザウロー王と話をすることにした。 ユウキとスウゲンも一緒だ。
「ザウロー王、本来であれば同盟がなった証として、文書を作成するところですが、今回それは無しにしたいと考えております。 なぜなら、この件はその時が来るまで秘匿しておくべきかと考えるからです」とユウキ。
「なるほど。 破るときは破るものだ、紙切れなどあまり意味は無い。 それよりは王と王の名誉にかけての約束と言うことだな」とザウロー。
「その通りです」と俺は応えた。
「今後の大まかな計画をお聞かせ願います」とスウゲン。
「うむ、王都より南部には5つの中規模の都市がその他にも小規模の街や村も20ほどある。 そこで兵を集め、軍を再編するつもりだ。 それに山岳地帯に住む少数民族もおる。 それも糾合したいと考えている」
「どのくらいの兵数になると見込んでおられますか」
「10万位にはなるだろう」
「現在王都に駐屯している銀のレギオンはどれ位ですか」
「おそらく5万ぐらいだと思う」
スウゲンはその後も幾つか質問を繰り返すと、静かに言った。
「ザウロー王、この成否は我々にも大きく関わってきますので、失礼を承知で申し上げますが、この計画は失敗するでしょう」
ザウローは驚くと同時に怒りの表情を一瞬見せるが、息を吐くと冷静さを取り戻し、ゆっくりと尋ねた。
「それは何故です」
「一つは見通しが甘すぎます。 同じ種族だから力を貸すのは当たり前と考えられておられます。 それでは乗ってこない者達も多数出るでしょう。 敵も懐柔策を出して来るかも知れません。 二つめは計画がずさんです。 これでは恐らく決起前に潰され、最終的に残る兵は恐らく2万程度でしょう。 これでは勝てません」
「すみません、この者はこのような言い方しか出来なくて」と俺は謝った。
「それでは、どうすれば良いか、貴方には分かっているのでしょうか」 ザウローは不満げな顔をしながらも辛抱強く話した。
「私の考えはこうです。 まず・・・・・」 スウゲンはテーブルの上に紙を広げ、簡単な地図を書くと説明を始めた。 すると最初は「状況を知らない者が、なにを机上の空論を話しているのだ」という感じで聞いていたザウローは、次第に大きく目を見開くと、身を乗り出して聞き入っていた。 そして説明が終わると、椅子に深く体を沈めつぶやくように言った。
「むう、おっしゃる通りです。 私の考えは甘かった」
「それと、王都においてもレジスタンスを組織して、内と外が呼応する必要がございます」とユウキが今度は説明し始めた。
「いや、お二人の申すこともっともです。 おっしゃるとおりにいたします」 ザウローはそう言うと、俺の方に向いて言った。
「カケル王は優れた参謀を二人も抱えられている。 実に羨ましい。 我々が勝てなかった訳だ」
「恐縮です」
「ですが、それもあのサムライには読まれて、対抗策を打ち出して来るでしょう。 実現は容易ではありません」とユウキ。
「分かりました」 ザウローはそう言ってから、少し考えて言った。
「カケル王、お願いですが、王都を奪還するまで、どちらかを私の参謀としてお借りできないでしょうか」
スウゲンとユウキは俺の顔を見た。
「いや、それはどうでしょう」と俺。
「それは得策とは言えないでしょう。 我々のどちらがついたとしても、ドラク族の人々は『王は人族の言いなりだ』と言って従わなくなる可能性があります。 それに我々と共謀していることが知れ渡ってしまうでしょう」とスウゲン。
「そうですね、残念ですがその通りだと思います」とザウロー。
「こうしては如何でしょう。 私かユウキ殿と必要に応じて念話で会話すると言うのは。 そうすれば適宜に助言出来ますし、こちらとしても状況を把握できます」とスウゲン。
「おお、それは良いですね。 カケル王、ご許可いただけますか」
「それでしたら、かまいません」
「ありがとうございます。 それではこれで決まりですね」とザウロー。
その後、ザウローは二人と幾つか細かな打ち合わせを済ませると、ゲートを使い帰っていった。




