18-3 危険な同盟
レーギアに戻った時、俺はザウローを客として連れてきた。 グレアムに部屋を用意させて、同盟の件の結論が出るまで、客として滞在してもらうことにしたのだ。 ただしザウローの正体は、主立った者以外には伏せておいた。
翌日の会議
俺は事態の重要性を考え、藍のレギオン、青のレギオンのサムライにも来てもらった。 会議が始まると、俺は昨夜のザウローとのやりとりについて話した。
「今回の選択によって、我らの今後を大きく左右するものと考えている。 皆の忌憚ない意見を聞きたい」
「同盟と言っても、黒のレギオンは実質崩壊していると言って良いでしょう。 黒の王は体よく我々を利用しようとしているだけじゃないですかね。 金のレギオンの時と一緒で」とアドル。
「そうですね、銀のレギオンにこちらから進んで、戦いを仕掛けるのは得策とは言えないのではないでしょうか」とリンエイ。 大方の意見は同様なものであった。
「待ってください」今まで黙って聞いていたスウゲンが手を上げた。
「これは金のレギオンの時とは違います。 私は同盟を結ぶべきと考えます」
「私も同じ意見です」とユウキ。 スウゲンとユウキは顔を見合った。
「その根拠を聞かせてくれ」 俺はスウゲンに言った。
「かしこまりました。 二つの選択をした場合の今後の見通しを考えて見ましょう。 まず同盟を断った場合です。 黒の王は南部の都市から兵を集め、王都を奪還すると言うことですが、恐らく失敗に終わるでしょう。 そして王は殺されるか、銀のレギオンに降ることになるでしょう。 そうなれば、名実ともに黒のレギオンは銀の属国となるでしょう。 そして国情が落ち着いた2、3年後に銀と黒の連合軍が、オーリンの森に向けて進軍してくることになるでしょう。 そうなれば例えその間に我々が準備を進めたとしても、勝つのは難しいと考えます。 恐らくその時の敵の兵力は20万ぐらいでしょう」
「20万だと・・・」とバウロ。
「今度は同盟を結んだ時を考えて見ましょう。 黒の王とすれば、王都の支配体制が完成する前に奪還したいと考えておられるでしょう。 恐らく3カ月から6カ月の間に事を起こすでしょう。 ですが王とその率いる兵達だけでは、失敗する可能性が高いと考えます。 しかし、そのタイミングに合わせ、我々が適切に力を貸せば、王都奪還は不可能ではないと考えます。 そして敗れた銀の兵達は、撤退するしかなく、改めて攻めるにしても慎重になるでしょう。 その間に黒の王はレギオンと王都の再建を進めることが出来ます。 そうすれば、再度銀のレギオンが攻めて来たときには、我々と黒の連合軍で対抗する事ができます。 これだとこちらにも勝ち目が出てくると考えます。 それに銀のレギオンも容易には侵攻しようと考えないはずです」
「なるほど、そう考えればこの同盟には意味があるな」とセシウス。
「そうですね。 この同盟は我々にも十分メリットがありますね」とトウリン。
「ですが、この同盟にはリスクが大きいと言うことも、覚悟しておかなければなりません。 王都奪還は、我々が手を貸しても成功率は五分五分と言うところでしょう。 何故なら向こうにはシーウエイというサムライがおり、我らの動きはことごとく読まれてしまうからです」とユウキ。 スウゲンも頷いた。
「そして王都奪還に失敗すれば、今度は明確な敵対行為としてそれを理由に、銀のレギオンは我々の方に矛先を向けるでしょう」とスウゲン。
「なるほど、いずれにしても我々は銀のレギオンと戦わなければいけない訳だ。 要はそれが今か2、3年後かと言うことだ。 そして今の方が、分が良いと言うことなら、決まりじゃないですか」とバウロ。
「では、我らは黒の王と同盟を結び、黒の王都奪還に協力すると言うことで良いですか」と俺は確認した。 皆は黙ってうなずいた。
俺は早速、ザウローにこの事を伝えると、彼は大いに喜んだ。 俺は皆に新しい黒の王を紹介した。 ザウローは皆の前に立つと、藍のレギオンとの件と、先の戦いの件を謝罪すると共に、今回の同盟について謝意を表した。