17-6 奪還作戦(2)
3人との打ち合わせが済んだ後、一人でいる俺のところにスウゲンが現れた。
「カケル様、よろしいですか。 内密のお話がございます」
「どうぞ、何ですか」
「先ほどもお話ししたように、王都までには3本の街道があり、向こうは囮も含め3組の護送団を組むはずです。 ですので本来はこちらも3つの奪還チームを組まねばなりません。 しかしこちらにはそれだけ準備するだけの時間も余力もありません。 ですからどうしても、確実な護送ルートを特定する必要がございます」 スウゲンはそこまで話すと、俺の目を見てきた。
「カケル様、ユウキ殿がお使いの情報入手ルートを使って、護送ルートを調べていただきたいのです。 そこならば情報を入手可能かと思います。 もちろんその情報源が極秘であろうことは、存じています」
(スウゲンはやはりザウフェルのことに気づいている。 どうする。 ええい、今は確実にユウキ達を助けることが重要だ)
「その件については、あたってみよう」
「ありがとうございます」
スウゲンが出ていった後、俺はザウフェルに念話を試みた。
「どうされました、カケル様」
「緊急事態だ」 俺はこれまでの状況を説明した。
「ユウキ達が護送されるルートを特定したい」
「承知いたしました。 探ってみましょう」
「よろしく頼む」
その日の夜、飛竜部隊の兵150名を副部隊長が率いて、飛空船で森の東の砦まで移動を開始した。 飛竜部隊の兵は、飛竜を飛ばせられるだけではなく、様々な作戦に対応出来るように訓練された特殊部隊でもあった。
別に10頭の飛竜とその兵、それにセシウス、トウリン、スウゲンと飛竜部隊の部隊長エラン、警護班とグレンはゲートを利用して、砦まで移動した。
砦に入ると、会議室ですぐに作戦の打ち合わせに入った。 作戦についてトウリンが説明した。
「銀のレギオンには馬の要らない馬車、自動車と言うそうですが、あるそうです。 銀の王都まではその自動車でも10日以上かかると思われます。 我々はその護送途中を襲います。 作戦はいたってシンプルです。 待ち伏せして、強襲して二人を確保し、速やかに離脱すると言うものです」 トウリンはここまで話すと一同の顔を見渡した。 皆同意するように頷いた。
「しかしながら幾つか問題があります。 まず一つは戦場から王都まで三つの街道があると言うことです。 敵はこちらが奪還に出ることは想定の内だと思われます。 従って、三つの護送チームを走らせるはずです」 トウリンはテーブルの上の地図上の線をなぞった。
「街道をはずれると言う可能性はないのですか」とレオン。
「この辺は一帯石がゴロゴロした荒れ地で道をはずれると、走行困難になるという話だ」とセシウス。
「もう一つの問題は時間だ。 奪還作戦は銀のテリトリーに入る前に行なわなければならない。 境界はこの川だ。 恐らくこの川を超える前となると、明後日中に決行することになる」
「それは必ずですか、万一川を越えてしまったら作戦は中止になるのですか」とエレイン。
「作戦を優先する。 だが極力向こうのテリトリー内は避けたい。 何故ならこちらから攻撃を仕掛けたということを、敵の開戦の口実にしたくないからだ」とセシウス。
「そしてもう一つ、敵は銃を装備して罠を張っていると言うことです。 こちらの損害も少なくないでしょう」とトウリン。
「具体的にはどのような作戦になりますか」とエラン。
「ここと、ここ、そしてここの三カ所に特殊部隊3チームを配置し待ち伏せます」 トウリンが作戦の詳細を説明した。 スウゲンは一言も発せず、何かを考えている様子だった。