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16-9 新竜王の誕生

 空間に扉が開き、俺達は竜王達のところへ戻ってきた。 後ろには他のドラゴン達も続いた。 グレンは竜王の前に進み出ると、竜玉を差し出した。


 「良くやった、グレンバロウス。 お前が新しい竜王だ」竜王が言った。

「ボクハ、リュウオウニハナラナイ」 グレンがそう言うと一同が驚いた。

「何故だ」

「ボクハ、コンナトコロニスマナイ。 カケルトクラス」

「ハッ、ハッ、ハッ。 そんな事を気にしていたのか。 心配しなくて良い。 どこに住んでいようと王は王だ。 お前はまだ若い。 今からこんな所にこもってしまうより、広く世界を見て学ぶ方が良い」

「エッ、ソウナノ」とグレン。

「お前が王だ。 王だからと言って、行動に制限があるわけではない」

「ワカッタ、ボクハオウ二ナル」

「オオーッ」一同から声が上がった。


 「グレンバロウスよ、玉を飲み込むのだ。 そうすれば玉はお前の体内で一体とり、お前に更なる力を与えるだろう」 グレンは、虹の光に輝く玉を飲み込んだ。

「グレンバロウス、人と暮らすならば心しておかねばならない事がある。 人族や、その他の種族は常に戦いに明け暮れている。 人は必ずお前のその力を、戦いに利用しようとするだろう。 良いか、人族の争いに関わってはならぬ」

「ワカッタ。 ダケド、カケルハボクノカゾクダ。 カケルヲコウゲキスルヤツハ、ユルサナイ。 ボクガ、タタキツブス」

「そうか、それも良かろう」


 「ところで、お前達はグレンバロウスが王と言うことで、異存は無かろうな」 竜王が他の若いドラゴン達に言った。

「異存はございません」

「ではこれ以降、お前達は新竜王を支えるのだ」

「よろしくお願いします」 赤竜を始め一斉にグレンに頭を下げた。


 「旧竜王様、一つお伺いしてもよろしいでしょうか」とファウラ。

「申してみよ」

「竜王様は、このような展開を予想されておられたのでしょうか」

「おおよそはな。 グレンバロウスを見た時に、秘めたる力が尋常じゃないことは分かった。 ただあまりに若すぎて、力の使い方が分かっていない。 このままだと力を発揮出来ないまま終わると思ったのだ。 だから人の王を一緒に行かせた。 彼がグレンバロウスの力を引き出すきっかけになると思ったのだ」


 「グレンバロウス、お前がこの者達と暮らすのであれば、その姿では不便であろう。 こちらへ来なさい」 そう言うと、旧竜王はグレンを岩陰に連れて行った。


 「カケルと言ったかな、緑の王よ。 お前がゴードンのレギオンを継ぐ者か」 赤竜が、遠くを見つめるような眼差しで言った。

「何故、ゴードン王をご存知なのですか?」と言った時、俺はハッとした。

「もしや、あなたはゴードン王と一緒だったと言われるドラゴンですか?」

「そうだ。 何故そのことを知っている」

「グレアムさんからお聞きしました」

「なんと、グレアムはまだ生きていたのか」

「ゴードン王はどんな方でしたか?」

「剛胆で、強く、それでいて優しい。 彼と暮らしていた日々は楽しかった」

「私とグレンもそんな関係を築けるでしょうか」

「君たちは大丈夫だろう。 あの子をよろしくたのむ」

「分かりました」


 俺が赤竜と話しをしていると、旧竜王が戻ってきた。 後ろには裸の少年がついてきていた。

「エッ、誰。 もしかしてグレン? いやだ、裸じゃないの」 エレインが手で顔を覆いながらも、指の間から見ていた。 その少年は黒髪の12から15才くらいの美少年に見えた。 身長はハルより少し高いぐらいだった。 リースが持って来た荷物から、俺の予備の服を取りだして着せた。 グレンは池の水面に映った自分の姿を見て驚いた。

「どんな気分だい?」と俺。

「ヘンナキブン。 ボクジャナイミタイ」 グレンは口を動かさず、念話で話した。

「人の口を通しての話し方が分からないから、しばらくの間は直接話せないだろう。 だがすぐに慣れる」と旧竜王。


 「さて、若者達よ、そろそろ行くが良い。 ワシの寿命はもうじき尽きるが、この場所はサーフィス達が守ってくれるはずだ。 ワシは思い残す事はない」

「人の王よ、これを持って行け」 ブロウガスと呼ばれた青竜は、俺が折った牙を放り投げた。 牙は俺の目の前の地面に突き刺さった。

「その牙とそこにある石を持って行き、名工に剣を鍛えさせよ。 そうすれば名剣となるだろう」 そう言って指さした所には、不思議な光を発する石があった。

「ありがとうございます」

「王をよろしく頼む」 そう言うと、青竜は笑った。


 俺達は日が暮れる頃には、船にたどり着くことができた。

「カケル様、ご無事で何よりです。 その者は・・・」とリンエイはグレンを見た。

「これがグレンです」

「えっ、意味が分かりませんが」

「後で説明します」


 翌日の朝、船は島を離れた。 船の上空を4頭のドラゴンがしばらく、見送るように飛んだ。 グレンの話では、あのドラゴン達もしばらくは個別に世界を見て回るとのことだった。 それでもグレンとの念話は可能なので、何かあれば駆けつけることになっているとのことだった。


 帰りは嵐もなく順調に進み、10日後には藍の王都に着いた。 その頃にはグレンもたどたどしいが、言葉をしゃべることが出来るようになっていた。


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