16-7 竜王への道(3)
道は果てしなく続くように思われた。 2時間ほど走り(登り)続けたが、少しも終着点が見えなかった。 他のドラゴン達も苦戦しているようで、抜きつ抜かれつを繰り返していた。 ただし、他のドラゴンが俺たちを抜いていく際には、必ずと言ってもいいくらい、体当たりなどの嫌がらせをしていった。
3時間ほど経った頃、周囲が突然変わった。 周りが炎でオレンジ一色だった。
(何だここは、ここは本当は地獄なのではないのか?) 空気もものすごく熱く、息をするのも苦しい感じだった。
「グレン、ここはヤバイ。 飛んで一気に抜けよう」
「ワカッタ」 俺たちは道の空間を飛ぶ事にしたのだ。 グレンが翼をはばたかせ、俺はグレンの背中のトゲにつかまり、邪魔にならないように浮空術で飛んだ。 道の地面からも不規則に火柱が立ち、俺達を攻撃してきた。 グレンは素早く火柱を察知して、機敏にかわしていった。 反対側の道からも火柱が上がるので、俺はそちらに注意しながら、襲ってくる火柱をシールドで防いだ。 そのエリアを抜けるのに約1時間かかった。
炎のエリアを抜けると、今度は一面白の世界だった。 道の外はものすごい吹雪が吹き荒れていた。 気温は先ほどの熱さが嘘のように、骨まで凍るのではないかという寒さだった。 体は震えこわばり、歯がガチガチぶつかり合うのを止めることが出来なかった。
道には厚さ約2メートルの分厚い氷の壁が出現した。 グレンは炎で融かそうとしたが、窪みはできるが完全には融かせなかった。 それを俺は氷の表面に手を当て、レムで粉砕した。 少し前を歩いていた緑のドラゴンは炎で融けないと分かると、怒り狂ったように氷を殴り、蹴って破壊していた。
ここでは氷の壁の他に、突然空中に巨大な氷のつららが幾つも現れ、頭上から攻撃してきた。 俺とグレンは、避けきれないつららを拳で粉砕した。 だがついに避けきれなかった1本がグレンの背中に突き刺さり、グレンが悲鳴を上げた。
「大丈夫か?」 そう言うと俺はグレンの背中からつららを引き抜いた。
「ヘイキ」
この極寒のエリアも約1時間かけて10枚の氷の壁を砕いた頃に終わりになった。
「グレン達は今何番目?」 エレインが聞いた。
「氷のエリアでさっき、緑のドラゴンを抜いたから3番目です」とファウラ。
「先頭は赤いドラゴン、その次が金のドラゴン、グレンが3番目、その次が緑、青のドラゴンと続いている」とレオン。
極寒のエリアを抜けると、そこは水の中だった。
(どう言う構造になっているんだ。 なぜ水が下に抜けないのだ? 一応呼吸はできるようだが、益々不思議なところだ)
道の周りには巨大な魚竜のような奴がウヨウヨいて、こちらの隙を伺っているようだった。 道を泳ぐように進んで行くと、道の外で赤竜も金竜も魚竜と格闘していた。 水の中の戦いはさすがに要領を得ず、苦戦していた。
俺たちのところへも一頭の魚竜が襲いかかって来た。 するとグレンがその魚竜に対して強力な念を送った。
「クルナ!」 魚竜は電気ショックを受けたように固まった。 俺はその隙に魚竜の頭に手を置くと、レムを送った。 魚竜は脳しんとうを起こし、気絶して腹を上に向けた。 それを見て他の魚竜達が一斉に、こちらに向ってきた。
グレンはそれに対して、さっきよりも更に大きく、念で叫んだ。
「クルナー!」 すると、こちらに向っていた魚竜達が、一瞬ビクッとした後、向きを変えて遠ざかって行った。 俺たちはその隙に道を上っていった。
やがて明るい水面が見えてきた。 俺たちが水面から顔を出すと、そこには陸地と小さな家があった。




