16-6 竜王への道(2)
翌日陽が昇ると、5頭のドラゴンと俺は竜王の前に集められた。 竜王は、昨日は体調が良くなかったのか終始気だるそうだったが、今日は雰囲気が違った。
「次代を担う若き者達よ、これより“竜王の道”に挑んでもらう。 気を抜けば命を落とすこともある、覚悟は良いか」 一同は無言で頷いた。
竜王は首を空に向けて伸ばすと、一瞬振るわせた。 そして地面に頭を近づけると、口から小さな玉を吐き出した。 その玉は直径5センチぐらいで、白のようにも見えるが、虹色の光を放っていた。 竜王はその玉を取ると、我々の前にゲートのような別の空間へ繋がる丸い口を開けた。
異世界への入り口の向こう側には、何か木のような塔のようなものが見えた。 竜王は向こう側に玉を持った右手(足?)を入れると、玉は向こう側に吸い込まれるようにフワフワと飛んで行った。
「向こうに見えるのが“竜王の道”だ。 向こうに渡り、先ほどの玉を手にしてこちらに戻ってきた者が新たな竜王だ。 さあ、行くが良い」 竜王が促した。
向こうの世界は、どこまでも続く草原だった。 異質なのは目の前、1キロくらい先に見えるものだ。 らせん状の塔のようなものが雲を突き抜けどこまで続くのか分からなかった。 俺たちはとりあえず塔(?)の側まで飛んで行った。 近づいてみると良く分かった。 そこには二つの道がらせん状に続いているのだった。 まるでDNAの二重らせん構造のようだった。
「何も必ずあの内側を通らなければいけない訳じゃないだろう。 俺は外側を一気にいくぜ」 そう言うと金竜は翼を広げて飛び立った。 赤と緑のドラゴンも続こうとした。 だが金竜の様子が変だった。 必死に羽ばたくのだが、なかなか上昇することが出来ないのだ。 外側だけ重力が強く働いているのか、強烈な下降気流が発生しているかのようだった。
「グレン慌てるな、少し様子を見るんだ」 俺はグレンの体に手をかけて、制した。
金竜の異常に気づいた他のドラゴンは、らせんの道に入っていった。 驚くことに中心から外側に、つまり道側に重力が働くようになっているようだ。 ドラゴン達は道を四足で駆け上がっていった。 外側を飛んでいた金竜も効率が悪いことに気づいたのか、内部に入って他のドラゴン達についていった。
「良し、俺たちも行こう」 そう言うと、ドラゴン達が上って行ったのとは別の道を行こうとしたが、そちらは上って行けなかった。
「何だ、もしかするとこっちは、下り専用か?」 そう言うと、仕方なく同じ道を登り始めた。
しばらく上って行くと、上から赤いドラゴンが落ちてきた。 その後青いドラゴンも同様に落ちてきた。 上の方を見ると、黒いマントに包まれた骸骨達が槍を手に、ドラゴン達に襲いかかっていた。 金竜は腕と尻尾を使い、骸骨達を次々と粉砕していった。 緑のドラゴンは、口から炎を吐いて骸骨達を焼き尽くしていった。
俺たちがその場所に近づくと、先ほどの骸骨達が次々と道から湧いて出た。 三体の骸骨が槍で三方から同時に襲いかかった。 グレンは大きく息を吸い込むと、端から炎を吐いて一気に骸骨を焼いた。 骸骨のマントは燃え尽き、骸骨はぼろぼろの灰になり崩れ落ちていった。 俺は右手から強力な旋風を出すと、他の骸骨達を吹き飛ばした。
更に進むと、上から巨大な丸い石が3つ転がってきた。
「グレン、潰されるぞ。 反対側の道に飛ぶんだ」 そう言うと、俺とグレンは反対側にある道まで跳んだ。 石は回避出来たが、その代わりその道は、やはり下ることしか出来なかった。 仕方が無いので少し降り、また元の道に戻った。
元の道に戻った所で、後ろから来た赤いドラゴンが、俺たちの頭を飛び越して行った。 追い越す際に翼で俺の頭を叩き、グレンの頭を蹴って行った。 俺もグレンもムッとしたが、何も言わなかった。 わざとやったのは間違いない。
その後も、赤いスライムのようなものが襲いかかってきたが、グレンが体に張り付かれる前に焼いてしまった。
竜王達やアドル達は、広場の隅にある池を利用して、竜王の道の様子を見ていた。
「不思議な場所ですね」とレオン。
「とにかく無事に帰ってきていただきたいですわ」とファウラ。




