15-3 白の侵攻
3カ月前、ホワイトキューブ
ヒョウマは王になると、早速軍の再編に取りかかった。 サムライのガーリンに早急に戦える体制を作るように命じたのだ。 そして同じくサムライになったクレオンには内政全体の見直しを命じたのだった。 ヒョウマもクレオンも他のレギオンから攻められた時の心配をしていたのだ。
それから5カ月ほどして、ある程度体制が固まってくると、ヒョウマは赤のレギオンに侵攻することを宣言した。
「それは、あまりに無謀です。 通常冬場には兵を出さないものです」とクレオン。
「そうか? ガーリン、今赤のレギオンに侵攻するとしたらどのような編成になる」
「はい、通常の人族のレギオン兵が2万、レグナ族が3千、氷塊兵が2千の2万5千というところです。 レグナ族は身長3メートルの長毛巨人族で極寒でも普通に活動出来ます。 氷塊兵は2メートルの氷の塊で出来た人型兵です。 どちらも冬の方が有効的に運用できることを考えますと、ヒョウマ様の進軍のお考えも悪くは無いと考えます」とガーリン。
「それ見ろ。 それで赤のレギオンはどう出ると思う」
「情報では、赤のレギオンの兵力は5万から7万と言われております。 ですが今の時期はレーギアの周辺は雪に覆われており、兵も十分な力を発揮出来ないと考えます。 恐らくはレーギアに籠城する戦術をとる物と考えます」
「そうか、では今が我らにとっては好機と言うことだな。 では具体的な侵攻作戦をまとめてくれ。 準備でき次第、出発する」
「かしこまりました」
1カ月後、白のレギオンは2万5千の兵力で、ゴルゴン山脈を越えて赤のレギオンの王都ファイヤーマウンテンに侵攻した。 王都の周辺には1メートル近くの積雪があり、赤のレギオンは王都の近郊に5万の兵を展開し向え討ったが、雪に身動きが取れず、思うような攻撃をすることが出来なかった。 逆にレグナ族と氷塊兵に蹴散らされ、たった1日で退却し王都の門を硬く閉ざした。 しかしレグナ族の猛攻によりあっさり城壁を崩され、王都への侵入を許してしまった。 仕方なくレギオン軍はレーギアに籠城を余儀なくされたのだった。
赤い巨大なドーム型のレーギアはシールド状の結界を張って防御した。 それに対してヒョウマは、巨大なハンマーを持たせた3人のレグナ族を1チームとして1時間ずつ交替で、24時間体制で結界を攻撃させた。 ヒョウマとしてはずっと結界を張り続ける事が出来るはずがないので、それが解除される機会を待つつもりだった。 ただ相手にプレッシャーをかけるために継続的に攻撃させたのだった。
結界は3日目の未明に解除された。 ヒョウマはその機会を見逃さず、兵を突入させた。 レーギア内部に兵が突入すると、赤の兵達も抵抗を続けたが、そもそも防御を考えた作りになっていないため、その日の夕方までには陥落した。 赤の王、グラス・ローエンは自分の命と引き替えに、レギオンの者達の助命を願い出た。
「お前が、赤の王か。 今はもう単独のレギオンでは生き残れなくなっている。 私に従え、そうすれば命は助けるし王のままで良い」 ヒョウマはグラスに言った。
グラスはヒョウマの顔を見つめしばし考えていたが、やがて口を開いた。
「承知いたしました。 私は貴方様に従いましょう」 グラスはそう言うと、跪いた。 こうして赤のレギオンは、白のレギオンの傘下に入ったのだった。




