15-2 衰退と台頭
翌日は全体のサムライを集めた会議が行なわれた。 現状の12のレギオンの状況について情報の共有と今後の課題について話し合うためだった。
「私の方から、直近のレギオンの状況について、ご報告いたします」とユウキ。
「まず橙のレギオンですが、タイロン王国を陥落させ現在支配下においております。 更にアストリア王国にまで侵攻中で、金のレギオンは援軍を送っていますがジリジリと押されている状況のようです。 金の王はタイロン王国を守る事が出来なかったため、アストリアやボスリアなどの周辺国からの求心力と影響力が弱まっていると見られています。 次に紫のレギオンですが、相変わらず大きな動きを見せておりません。 密かに軍備を進めて、橙のレギオンと金のレギオンがつぶし合った後で、漁夫の利を狙っているのだろうと思われます。 そして白のレギオンですが、ようやく半年ぐらい前に新王が立ったばかりなのに、赤のレギオンを攻めて落としています。 まだ詳細は分かりませんが、赤のレギオンは白の傘下に入ったようです」
「白の王ってあのヒョウマなのだろう?」とセシウス。
「確認は取れていませんが、恐らく間違いないだろうと思われます」とユウキ。
「ただ者ではないと思っていたが、やはり12王の器だったか」
ユウキは話を続けた。
「水晶のレギオンですが、最近新王が立ったという黄のレギオンと同盟を結んだという話です。 水晶のレギオンは金のレギオンとも同盟を結んでいるので、我々に対しての雪辱を果たすつもりだと考えられます。 黄のレギオンについては、つい3カ月ほど前に新王が立たれたようですが、どのような王なのかの情報はまだ入手できていません。 銀のレギオンについてですが、まだ具体的な侵攻を進めているところはありません」
「この前、青のレギオンにちょっかい出して失敗しているが、諦めたといえるのかな」とバウロ。
「それはまだ何とも言えません。 密かに機会を狙っているのかも知れません」とユウキ。
「そんな事は私と、カケル様が許しませんわ。 そうですわね、カケル様」とミーアイ。
「そうだね」
「だが銀のレギオンの武器は厄介だぞ」とセシウス。
「そうですね、銃を始め銀のレギオンの兵器に対する策は考えておく必要がありますね」とユウキ。
「と言うことは、当面は水晶のレギオンと銀のレギオンを警戒すれば良いと言うことですよね」とアドル。
「そうですね、黒のレギオンが再び攻めてくるとして、直ぐにではないでしょう。ですが、水晶と銀どちらが攻めて来たとしても、今回以上の兵力でしょう。 こちらも今以上に兵力を増強する必要があります」とスウゲン。
「うん、各自出来ることを考えてみて欲しい。 我々は誰が攻めてこようと、必ず生き残るのだ」 俺は言った。
「私からの提案ですが、今回の戦いで設けた砦ですが、きちんと作り直して恒久的な物にしては如何でしょうか。 銀のレギオンが攻めて来るにしても黒のレギオンが再び攻めて来るにしても、あそこが防衛の重要拠点になると考えます」とトウリン。
「その通りですね。 私も賛成です」とユウキ。
「分かりました、そうしましょう」
その後、各自が思っていることを述べ、有意義なアイデアも幾つか出てきた。
その日の夜
俺が部屋でくつろいでいる時に、ユウキがやってきた。
「邪魔して良いか?」とユウキ。
「ああ、大丈夫だ。 何かあったのか」
「ちょっとな。 今日の会議が終わった後、スウゲン殿に情報源について聞かれた」
「えっ、それでどうしたんだ。 彼は鋭いから中途半端な嘘は簡単に見破ってしまうだろう」
「ああ、裏の稼業もやっているような商人など、複数の情報源を持っているとだけ言った」
「それで納得したのか?」
「訝るような顔を一瞬見せたが、ニコッと笑って『そうなのですね』と言ったきり後は何も言わなかった。 だが恐らく、察したのかも知れない。 真実にまで到達したとは言えないかも知れないが、疑念は持っているだろう」
「どうしよう、変に疑念を持たれたままよりも、いっそ全部話してしまった方が良いのではないか」
「いや、このままの方が良いと思う。 たぶん彼はこの件はこれ以上聞いてこないと思う」
「なぜだ?」
「問題無いような情報源だったら、自分も利用するために聞いてくるだろう。 だが彼の推測が正しいところにたどり着いたなら、そのはらんでいるリスクのために、彼はそれ以上触れないはずだ」
「なるほど、分かった」