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14-14 決戦の砦(1)

 俺とグレンが砦に戻ったのは、午後の陽が東に傾きかけた頃だった。

 砦の入り口の破壊の状況が攻防戦の激しさを物語っていた。 第2の門も破られていた。 第2の門の後ろには、そこを塞ぐように四角く高い壁に囲まれ第3の門が控えていた。 しかしその第3の門も破られていた。 そこを破られればもう完全に砦の内部である。 もちろん内部に入ってもいたるところに罠は隠されていたのだが、もうそこまでいけば、落城は時間の問題というところである。

 破られた第3の門は、ユウキの機転で土の壁で塞がれていた。 壁の上からは兵達が敵兵に矢を射かけ、火球を打ち込んでいた。 これまでの侵入路にはおびただしい黒の兵達が倒れていた。


「凄まじいな。 意地になっているとしか思えない」 俺は空中で状況を確認すると、下りてきてユウキに言った。

「アーセル王の執念を感じますね」とユウキ。

 結局、その日も落とせず兵を収めた。 コーセルは早速、破壊された門の修復を命じた。


 砦の会議室

 「ではバスランもうまくいったのですね。 ソウラも勝利したという連絡が入っています」とトウキン。

「ですが、これでアーセル王は益々退くにひけなくなりましたね。 最低でもこの砦ぐらいは落とさなければ帰れないと考えるでしょう」とユウキ。

「恐らく明日が決戦と考えているでしょう」とトウリン。

「どう対応するつもりですか」

「明日で決めます。 策はこうです・・・・」 ユウキが策を説明した。

「分かりました。 セシウスさんとスウゲンさんにも伝えましょう」


 アーセル王の陣

 夜になってソウラとバスラン攻略に向っていた兵達が到着した。 ソウラから帰還した兵は約3千人、バスランから帰還した兵は約1万だった。 帰還した者達の中には負傷者も多く、また多くが疲れ切っていた。


 「何という不甲斐なさだ。 トウキンは討たれ、ザウローも重傷。 10万の兵も今では半分になってしまった。 何が間違いだというのだ」 アーセルはテーブルを叩いた。

「アーセル様、今回の遠征は失敗です。 兵を退かれるべきかと具申いたします」とガエン。

「このまま退いたら、予は他のレギオンからのいい笑い者だ。 退くにしてもあの砦だけでも落とす。 明日こそは必ず落とす、全軍の気を引き締めるのだ」

 ガエンはそれ以上何も言えなかった。


 翌朝、黒のレギオンの兵は、夜明けと共に砦の入り口に殺到した。 盾を片手に次々と押し寄せ、降り注ぐ矢や煮えたぎる油を被りながらも前に進むことを止めなかった。 激しい攻防が1時間ほど続いた時、異変が起こった。


 「アーセル様、北に軍勢が現れました」 兵が知らせた。

「何だと、緑のレギオンか」

「そのようです。 他に獣人族や魔人族などもいるようです。 その数約2万」

「兵が半数になったから、勝てるとふんだのか。 甘いわ。 望む所だ、向え討つ準備をしろ」 アーセルはガエンに命じた。


 ガエンは5万の軍勢を5つに分けた。 北側に1万ずつ3部隊を配置し、アーセルの本陣に1万、砦の側に1万だ。


 セシウスは緑のレギオンの軍を真ん中にその右に海兵部隊、その更に右にマブル族、左にアデル族、後ろにエルム族とブルカ族を配した。


 北から飛空船が飛んで来ると、黒のレギオン軍の上空で船底の一部が開き、水をまき散らし始めた。 兵達は最初毒でも撒かれたのかと慌てふためいたが、ただの水だと分かると、飛行船に向って罵声を浴びせた。 俺は砦の一番高い屋根の上に立つと、右手を上げて集中した。 それに合わせてアドルも同様に手をあげて意識を集中させた。

 たちまち黒の軍の頭上に黒い厚い雲がかかってきた。 俺とアドルは頃合いを見計らいほぼ同時に手を振り下ろした。 すると無数の稲光が黒の軍の頭上に走り、同時に轟音と衝撃が響き渡った。 黒の兵士達は、先ほどの水を浴びて濡れていたため、直接落雷を避けることが出来た兵士達も次々と感電し、広範囲で倒れていった。 それが攻撃の合図だった。


 森の中から、フィーゲルのボーク部隊が現れると、空中から攻撃を開始した。 落雷を逃れられた兵達も、ボーク部隊の光の矢を受け混乱しだした。 更にエルム族とブルカ族の弓の斉射を受け、早くも3つの部隊は崩れ始めた。


 頃合いを見計らっていたセシウスは攻撃の命令を下した。 自身は100騎の騎竜部隊を率いて真ん中に突入していった。 それに合わせて、バウロやアドル、アビエルも突撃を命じた。

 セシウスは騎竜を駆けながら、槍を振るうと前方に一直線に暴風が起こり敵兵達を左右に分断した。 そこへ突入すると一気に敵陣を攪乱させた。

 バウロも火炎の旋風を敵陣に見舞うと、一気に飛び込んでいった。 アドルも槍を片手に敵陣に飛び込むと、槍を横一閃に振った。 その前にいた兵士が5人一気に吹き飛ばされた。


 アビエルはガルにまたがったまま、胸の前で両方の掌を合わせると隙間を空けた。 すると掌の間に紫色の煙のような球が出来上がった。 その球は次第に大きくなるとアビエルの頭上に浮かび上がった。 紫の球は1メートルほどの大きさになると、アビエルはその球を敵軍のまっただ中まで飛ばした。 そしてその球は敵軍の上空で炸裂し、その無数の破片が敵兵に突き刺さると内部に取り込まれていった。 外傷は何もなかった。 兵士達も何が起こったのか分からずお互いに顔を見合わせていた。

 変化が起こったのは次の瞬間だった。 兵達は恐怖に顔を引きつらせ、武器でお互いに殺し合いを始めたのだった。


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