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14-3 ドラク族の街

 緑のレーギア、会議

 会議の席上で、キーファーは黒のレギオンでの謁見について報告を行なった。

「なるほど、やはり予想どおりでしたね。 しかもしっかり藍のレギオンの件を根に持っていますね」とユウキ。

「では、やはり戦争は避けられないと言うことか」と俺は言った。

「向こうは戦争をするつもりで、わざとやっていますからね」とトウリン。

「グラッツ山の東側の状況はどうなっていますか」

「森の東端で木が切られ、50戸ほどの村が建設中です。 ドラク族の街、バスランでも聞き込みいたしましたが、急な入植に戸惑っている様子とのことです」

「今後、どのような展開になると考えていますか」

「我々の予想では、黒のレギオンは入植した村の民を守ると称して、千人から2千人の兵を送ってくると考えます。 そしてこちらとのトラブルが起これば、それを口実に大軍を送るという算段でしょう」とセシウス。

「こちらはどう対応するつもりですか」

「黒のレギオンの侵攻の口実を作らぬように、牽制しながら時間を稼ぎます。 その間に準備を進めます」とユウキ。

「ただ、問題があります。 バスランのドラク族です。 本来ならば黒のレギオンとは関係がないので、中立のはずです。 しかし必ず黒の方から懐柔の手が及ぶはずです。 それに対してドラク族がどう動くかによって、こちらの対応策も変わってきます。 最悪は背後から狙われるということも想定しなければなりません」とトウリン。

「ならば彼らの真意を確認しておく必要があるな。 私が行こうか」

 ユウキが少し考えてから言った。

「そうですね、それがよろしいかと考えます。 何故なら今回、ネックの一つに兵員の輸送があります。 カケル様のゲートを使う必要も出てくると考えます。 それと予想される戦場を見ておきたいので、私も行きます」

「分かった、じゃあそれで行こう」


 二日後、アグレルの家

 俺たちは、まずグラッツ山のアグレルの家まで、ゲートで移動した。

「お久しぶりです、師匠」

「何じゃ、また大勢で。 また修行に来たのか?」とアグレル。

「いいえ、今回は別件でもっと東へ行かねばなりません。 途中寄らせていただいただけです」とレオン。

 アグレルはいぶかるようすで言った。

「東じゃと、では黒のレギオンと一戦始まりそうだと言うのは本当なのか」

「いや、まだそうと決まった訳ではありません。 できればそうならずに済めばと考えています」と俺が言った。

「そうか。 まあ、気をつけて行け」


 更に二日後、ドラク族の街、バスラン

 この街は他の種族の街とはまた違う雰囲気があった。 建物は木の柱に土壁を塗った円筒形の建物で、ほとんど家が高床式になっていた。 そして家と家を繋ぐ吊り橋があちこち架かっていた。

「ドラク族は水辺に街や村を作るそうです。 雨期の氾濫に備えた作りになっているのでしょう」とファウラが説明した。 街行く人々は我々を見て振り返った。 正確にはグレンを見て驚いていたのだ。 最近はグレンも大分成長しており、身長は人間の大人と同じぐらいになっていた。


「ドラク族にとって、ドラゴンは神にも等しい神聖な存在です。 そのせいでしょう」とファウラ。

「えっ、じゃあ俺たちは神様を連れて歩いているのかい」とリース。 そんな事も気にせずグレンは、あくびをしながらついてきた。


 族長の邸の一室

「カケル王、ようこそおいでくださいました。 族長のケウラス・ホーグです」 挨拶した男は50代のグレイの髪の男だった。 俺は奇異に感じた。 目の前の男は普通の人族のように見えるからだ。 戦った黒のレギオンの兵やサムライとは感じが違った。 俺のそんな思いが伝わったのか、ケウラスは笑いながら話した。

「竜人族に見えませんか。 ドラク族は太古の時代に始祖のドラゴンが人の女性に恋をし、人に化身して二人の間に出来た10人の子ども達の子孫と言われています。 ドラク族にはドラゴンの血をより濃く引く者たちと、限りなく人族に近い者達まで様々なのです」

「そうなのですね」


「ところで、本日こちらにおいでになられたのは、黒のレギオンの件ですね」

「そうです。 黒のレギオンが強引に進めている入植の件については、どうお考えですか」

「正直、こちらも困惑しております。 同じドラク族とはいえ、千年も前に分裂してほとんど交流もありませんでしたから」

「黒のレギオンからは何か言ってきましたか」

「いえ、特段は・・・」 ユウキはじっと族長の顔を見ていた。

「そうですか、このままでは我がレギオンは黒のレギオンとの戦争になる可能性が高いです。 そうなった場合、このバスランも態度を明確にしていただかなくてはなりません」

「我々は、千年前も今も緑のレギオンに対して敵対する考えは毛頭ございません。 しかし、同胞同士で殺し合いをすることにもためらいがございます。 ですので、カケル王に加勢すると言うことも、ご容赦願いたいのです」

「そうですか、分かりました」 俺はその件については、そこで終わらせた。


「ところで、カケル王はドラゴンをお連れになっておりますが、どのような経緯でそのようなことになったのか、お聞かせいただけますでしょうか」とケウラス。

「実は・・・」俺はグレンとの出会いについて話した。


「うーん、そうですか。 カケル王は“竜朋”に選ばれたのかも知れませんね」

「リュウホウ?」

「はい、ドラゴンは人と交わることをしませんが、希にドラゴンが信頼できる人間を友として認めることがございます。 その者を竜朋と言うのです。 ドラゴンは我らドラク族に取っては神にも近い存在ですから、我らにとっても竜朋は大切な人になります」

「そうですか。 それはうれしいですね」

 その夜は族長の邸に泊めてもらうことになった。


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