12-11 新王の決断
レーギアも王都も喜びに沸いていた。 1年近くに及ぶ内戦が終わったのだ。 セリナはバウマンが支配していた3つの城を開城させ、兵達も新王への忠誠を誓った。
俺たちはレーギアで歓待されたが、さすがに3日目にスウゲンがそろそろ戻りましょうと進言したのだった。 既にバウロやセシウス達はレギオンに戻っていた。 俺たちも一緒に戻ろうとしたのだが、ミーアイ王がそれではお礼が出来ないと引き留められたのだった。
俺たちは帰る前にミーアイ王に挨拶に行った。 ミーアイは最初に会ったときのように玉座から下りてくると、俺の手を握った。
「お帰りになられるのですね。 その前に重大なお話がございます」 ミーアイは真剣な面持ちで言った。
俺たちは部屋を換えた。 出席したのは俺とミーアイ、スウゲン、リオナである。
「重大なお話と言うのは、我々が提案している同盟の件でしょうか」 俺は尋ねた。
「はい、その件です。 お申し出のございました同盟につきましては、お断りさせていただきます」
「ミーアイ様、それではお約束が違います」とリオナは驚いて言った。
「何故でしょうか。 この同盟は対等なもので、お互いのレギオンにとって益にこそなれ、不利益は無いはずですが」とスウゲン。
「いえ、私も熟考いたしましたが、この同盟では不十分です」
「どう言うことでしょうか」
「我がレギオンは、ようやくこれから私の元で体制を整えていくところです。 ですが我がレギオンは弱小で、今回のように銀のレギオンなどに狙われることでしょう」
「ですから、その時に援軍を送れるようにするための同盟ではありませんか」と俺。 スウゲンはミーアイの意図を推し量ろうとするように顔を見つめた。
「通常、同盟は期限を切って結んだり、状況の変化によってあっさり破棄されたりするものです。 それでは弱いのです」
「ではどうせよとおっしゃるのですか」
ミーアイは少し間を置き、大きく深呼吸をした。
「それで私は決めました。 私はカケル王のサムライになります」
「エーッ!」俺は思わず声をあげた。
「つまり、青のレギオンはカケル王と運命を共にすると言うことです」
「そう言うことですか」とスウゲン。
「落ち着いて、よく考えてください。 それでは青のレギオンは私の傘下に入ると言うことですよ」と俺。
「よく考えた結果です。 ただし、それには条件が一つございます」
「えっ」 俺は条件という言葉に過敏に反応した。
「カケル王には、私の伴侶になっていただきます」
(まさかとは思ったが、やっぱりそうなるのか~い)
「そんな重大なことを簡単にお決めになられてはいけないのでは・・・」と俺。
「簡単ではございません。 3日3晩寝ないで考えたことでございます。 お考えになってください。 12王を嫁にもらおうなどと言う者がこの大陸におられますか」
「確かに、私ならご遠慮させていただきますね」とスウゲンは笑いながら言った。
「そうでしょう。 ですから私をもらっていただくお方は、カケル様しかおられないのです」
「そうですか。 分かりました」 そう言うと、俺はこれ以上の抵抗を諦めた。
「では、これで決まりですね」 ミーアイはうれしそうに言った。
青のレーギアで結婚式をすることになった。 日程や諸々については担当者を決めて打ち合わせをすることになった。
スウゲンがアドルたちのところへ戻り、会談の内容を話した。
「エーッ、また奥様が増えるのですか」とエレイン。 俺はアビエルの顔を見た。 少し口を歪めたが、平然と言った。
「カケル様、私はかまわないがファウラは怒ると思いますよ」
(そうか、やっぱり怒るんだろうな) 俺は気が重くなってきた。
「とにかく帰ろう」 そう言うと俺はゲートを開いた。




