12-8 王の決闘
翌日、ミーアイ王と今後のことについて打ち合わせをしているところへ、リオナが入って来ると報告した。
「今朝方より、銀のレギオンの大型の飛空船が10隻検知されました。 恐らくバウマンの依頼で銀のレギオンから大量の兵を移送したのだと思われます」
「カケル様、敵も決着を焦っているようです。 グズグズはしていられませんね」とスウゲン。
「どうするのですか」
「リオナ殿、バウマンと連絡は取れますか」
「“通信鏡”を使えば可能です」とリオナ。
「ではミーアイ王とバウマンとの決闘を3日後に行なうというのはいかがでしょうか」
「それでは王の準備が出来ません」とリオナ。
「良い、これで敗れるようでは、最初からその器では無かったと言うことだ」
「ではそう言うことで伝えましょう」
スウゲンの巧みな話術で、バウマンが決闘を断ることは出来なかった。 銀のサムライのギリオンは嫌な顔をしていたが、カケル王とギリオンが立会人になるということで納得した。 3日後の正午、王都の東の軍の演習地で戦うことが決まったのだ。 どちらが勝とうとそれで決着とするため、お互いに兵は連れてこない約束となった。
レーギアの庭
「きゃあ!」 ミーアイの剣が弾き飛ばされ、少しは慣れた花壇に突き刺さった。 ミーアイの剣の実力を確認するために、エレインが試合ってみたのだった。
「カケル様、失礼ながらミーアイ王は、剣の腕は全然ダメですね。 カケル様がこちらに来たばかりの頃と一緒です」
「それはひどいな」と俺。
「これは2日や3日ではどうしようもないです」とエレイン。
「どうするか」 俺は考えた。
「ミーアイ王はどんなレムが得意ですか」とスウゲン。
「私は土と金と光の属性のレムが使えます」
「光だと、具体的にはどんな、雷撃は使えますか?」
「雷撃は使ったことがありません」
「じゃあできるやつを、ちょっとやって見せていただけますか」
ミーアイは両手を伸ばすと、小声で呪文を唱えた。 すると掌からまばゆい光が発せられた。 俺はまぶしくて目をつむった。 そして静かに目を開けた。 しかし何も変わっていなかった。
「へっ、どうなったの。 何も変わっていないようだけど」とアビエル。
「はい、これだけです」とミーアイ。
「これでは目くらましにしか使えないぞ。 やばいぞ」 俺はスウゲンと顔を見合わせた。 スウゲンも困った顔をした。
俺はミーアイに戦闘に必要なレムの使い方を教えた。
(まさか数ヶ月前まで、同じような状況だった俺が人に教えるとは・・・)
「いいかい、力を抜いて体中をレムが駆け巡るイメージを持つんだ。 体が器でレムが中に入った水だ。 そしてここぞという一瞬に指先や掌から放出するイメージだ。 自分がどのような結果にしたいかという具体的なイメージを持つことが大事なんだ」
それから2時間ほど二人で特訓したが、なかなか思うような結果は得られなかった。
(これはマジでやばいぞ。 バウマンは軍のサムライだったのだからその強さは、セシウスやアドル並と思っていて間違いないだろう。 このままでは間違いなく勝てない。 どうする)
それから2日間、特訓を行なった。 俺としてもやれることはやった。 とても「これで勝てる」と言える状態ではなかったが、後は彼女次第だ。
3日目の正午、演習場
俺たちが演習場に到着したときには、バウマン達は既にきていた。 レギオンの兵達は来ていなかったが、周りには銀のレギオンの迷彩柄の軍服の兵達が囲んでいた。
「バウマン殿、余計なトラブルを招かないためにも、お互い兵を連れてこない約束のはずですが」 俺は言った。
「これらの兵は私の部下ではない。 ギリオン殿の部下だ。 立会人は多い方が良いでしょう」とバウマン。
「まあよろしいでしょう」とスウゲン。
ミーアイは銀色に輝く甲冑に身を固めた。 バウマンは黒く輝く甲冑を着ていた。 二人は向き合い、開始の号令を待っていた。 スウゲンはミーアイに最後のアドバイスをしていた。 ギリオンの兵が何かの機械を二人に向けており、恐らくテレビカメラの様な物だろうと思われた。 バウマンは自分の力で、ミーアイを倒し自分が王として相応しいことをレギオンに示したいのだ。
「それではカケル王、開始の合図を」とバウマン。
「始め!」 俺は開始を宣言した。




