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12-6 バウマン

 馬車で2時間ほどなだらかな丘陵地帯を走ると、やがて堅牢な要塞のような城が見えてきた。 深い空堀と高い城壁に囲まれた、美しさとはかけ離れているが素人にもこの城を攻め落とすのは容易ではないと思わせる威容を誇っていた。


 城の一室に通されると、やがて2人の男が入って来た。 一人は身長が180センチを超えるがっしりした30代後半の男、明らかに軍人と思われる人物だ。 もう一人も軍人には違いないと思われたが、軍服も違っていた。 その男はやせ形の少し気むずかしいような男だった。


 「私は青のレギオンのサムライで軍の総司令、バウマン・グレイです。 こちらは銀のレギオンのギリオン・ベンファ殿です。 軍事顧問をお願いしています」 大柄の男が話した。

「緑と藍のレギオンの王、カケル・ツクモです」

「お会い出来てうれしいです、カケル王。 あなた方がこちらにいらっしゃった理由は、存じております。 そこなるミーアイの部下に助けを求められたのでしょう。 その者が何を言ったか分かりませんが、ミーアイは前王が亡くなられたどさくさに天聖球を盗んだ者です。 大罪人です。 そんな者に加担されるのは、このレギオンを更に混乱させるだけですし、カケル様のレギオンにとってもマイナスにしかなりませんよ」 俺は銀のレギオンをバックに暗に脅されているみたいで、少しむかついた。


 「何を言うか。 大罪人はお前だ。 ミーアイ様は正式にギーガン王から後継者に指名されたのだ。 私はその場にいたのだ。 ギーガン王はお前の強すぎる野心を警戒されて、後継者に指名しなかったとおっしゃっていた」とリオナは興奮気味にバウマンを非難した。

「そんな言葉を誰が信じるか。 私は永年軍を統括しこのレギオンを支えてきたのだ。 私以外に次の王に相応しい者などいない。 12王は強く無ければならないのだ。 あんな内政を補佐していた小娘に王など務まる訳が無い。 そんな王のもとでは国民は不幸になる」

「お前が王になった方が、国民は不幸だ」とリオナ。

「まあ、お互いに言い分はあるでしょう。 ですがこのような状況が長く続くことは良くありません。 カケル王が心配されているのもそこです」とスウゲン。

「ご心配をいただき申し訳ない。 この件はカケル王のお手を煩わせなくとも、じきに解決いたします故、どうぞお引き取りください。 解決して私が新王となったあかつきには、カケル王には是非よしみを結んでいただきたいと考えております」

「銀のレギオンの力を借りてですか」 俺は言った。

「銀のレギオンには色々ご協力をいただいております」


 「どうでしょう、青のレギオンでこれ以上被害を大きくしないためにも、ミーアイ殿とバウマン殿が直接戦われて決着をつけられるのはいかがですか」とスウゲン。

「はっは、私もそうしたいところですが、あの臆病者はレーギアにこもり出てこようとしないのです。 今更あの臆病者は出てこないでしょう。 まったく12王に相応しくありません」

「それでしたら、カケル王と私で説得いたしましょう。 レギオンの皆の前で正々堂々と戦い、貴方がミーアイ殿を倒されたのなら、レーギアの兵も街の人々も貴方を正式な王と認められるでしょう。 もし貴方が銀のレギオンの力を借りて強引にレーギアを攻めて天聖球を奪われたとしても、貴方は簒奪者として悪王の名を歴史に刻むでしょう」

「クッ、あの臆病者が説得に応じるわけがない」

「それは分からないでしょう。 とりあえずミーアイ殿に会って見ましょう」と俺。

「いえ、カケル王が動かれると、事態を複雑にしてしまいますので、遠慮いたします。 どうぞお引き取りください。 もしお引き取り願えないのでしたら・・・」

「どうだと言うのです。 ミーアイ殿の前に私と戦いますか」 俺はむかついて、ついけんか腰で言ってしまった。 バウマンも12王に脅しは通用しないと気づいたのか慌てて言った。

「いえ、そう言う訳ではありません」

「ならば、私にミーアイ殿と話をする時間を与えなさい。 そうすれば貴方と直接対決する機会を作りましょう。 私は正直なところ少しむかついています。 私も子どもの使いではないのです。 たかが一人の元サムライに言われて『はいそうですか』と帰る訳にはいかない。 言っておきますがこれはお願いではない。 貴方がダメだと言ったら、実力で行くだけです」 そう言うと俺は怒りの気を一気に放出した。 バウマンもギリオンも気の変化に即座に気づき、お互いに顔を見合わせた。


 「分かりました。 どうかお怒りをお鎮めください」とバウマン。

「そうですか、それでは決まりですね。 ではスウゲン、アドル時間が惜しい。 行きましょうか」

「そうですね、見送りはけっこうです」とスウゲン。


 俺たちは、大勢の兵士が見守る中、堂々と城を出てきた。

「スウゲンさん、ついむかついて成り行きであんな事を言ってしまいましたが、大丈夫でしょうか」

「はは、私の想定外でしたが結果オーライです。 それよりもカケル様も貫禄が出てきましたね。 格の違いが圧倒的でしたよ。 本当は彼らも捕らえて投獄するなり、この場で殺すなりしたかったはずですが、何も出来なかったですからね」とスウゲン。

「そうですよ。 私もカケル様の気の質が変わった時、本当にここで暴れるんじゃないかと、私も身構えましたよ」とアドル。


 俺はレオンに念話で話しかけた。

「レオンさん、今どこですか」

「カケル様、我々は王都の東3キロのところまで来ています。 カケル様はどちらですか」

「こちらは王都から30キロほど北の地点です。 ゲートで移動しますからすぐに王都の東門まで行けます。 そこで落ち合いましょう」

「承知いたしました」


 東門の手前で俺たちは合流した。

「如何でした。 敵のサムライは」とレオン。

「なかなかしたたかな男のようでしたが、カケル様が格の違いでねじ伏せました」とスウゲン。 リオナも頷いた。

「えっ、それは見てみたかったですね」とリース。

「それで、どうされます。 城壁を上りますか」とレオン。

「いや、堂々と門から入りましょう」とスウゲン。


 俺たちは門の前に到着すると、門番の兵達に呼び止められた。

「何処へ行く、もう今日は出入り出来ぬ。 明日の朝に出直せ」 兵達が槍を突き出し、横柄に言った。

「こちらは緑と藍のレギオンのカケル王様だ。 門を開けよ。 お前達の上官のバウマン殿も認めている」とスウゲン。 兵達は俺たちのただならぬ雰囲気に慌てた。 一人が兵舎に走ると、しばらくして戻ってきた。

「お通りください」 兵達は門を開けると、恭しく促した。

「本当だね」とエレイン。


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