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12-5 拘束

 我々は王都を目指して移動した。 王都までは約50キロあるとのことだ。 夜明けまではもう数時間しかない。 夜明けまでに出来るだけ距離を稼いでおきたかった。 なだらかな丘陵や平野が続く道は、アグレルの元で修行した者たちにとってはどうってことない移動だったが、リオナとスウゲンそしてアビエルにとっては地獄の行軍だった。 明け方近い頃には、俺がアビエルをアドルがスウゲンをリースがリオナを背負って走った。 そして夜が明ける頃には、王都まで10キロほどのところまで来ていた。


 森の中に隠れ休息をとっているときに、レオンがスウゲンに聞いた。

「これからどうされるおつもりですか。 サムライの説得に失敗したのでしょう? 作戦の変更をしなくてはいけないのではありませんか」

「いや、予定どおりです。 あのサムライは監視されている。 だから本心を話せなかったのだ」とスウゲン。

「えっ、ではセリナ様は・・・」

「我々が部屋に入ったときに、彼女は周りから見られているのを気にするかのようだった。 恐らく何らかの方法で彼女は常時監視されているのだろう。 私は彼女がこちらの考えるように動いてくれると信じています」 スウゲンはあっさり言った。

「それでは、とりあえず夜の侵入までここで休息をとると言うことでよろしいですね」とレオン。

「私が見張りに入る」 そう言うとホーリーが樹上に消えた。


 昼過ぎに皆起こされた。

「暗くなってから潜入するのではないのですか?」とレオン。

「イヤ、それは向こうも予想しているので、かえって警戒が厳しくなる。 その裏をかいて街の人々に紛れて街に入る。 と言うていで行く」とスウゲン。

「えっ、良く分からないのですが・・・」とリース。

「セリナさんの通報で、我々が潜入していることは、バウマンにはもう知られているでしょう。 きっと我らのレギオンへの侵入を阻もうと全力を挙げてくるはずです。 ですので、恐らく街に入る前で待ち伏せを受けるでしょう。 そこで我らは適当に抵抗しながら最終的には捕縛されます」

「えっ、捕まるのですか?」とエレイン。

「そうです。 そうすれば我々は、バウマンのいるところへ連れて行かれるでしょう」とスウゲン。

「何故そう言い切れるのですか。 そこで殺されてしまうと言うこともあるのではないですか」とレオン。

「それはありません。 バウマンはカケル様の参戦は望まれないはずです。 もし殺そうとすれば、本格的な我々との戦争になってしまうので、そうはしたくないはずです。 きっと青の王にカケル様が会われる前に、逆に自分の側に取り込もうとして説得を試みるでしょう。 ですので我々は観念したふりをしてバウマンのところまで行きます。 その後、そこを脱出して今度こそ都市に潜入します。 ただ、全員が捕まる必要は無いでしょう。 脱出するときも少数の方が成功しやすいですから。 カケル様と私、リオナ殿それにアドル殿でよろしいでしょう」

「合流する場所と時間は、後で念話で指示します」俺は言った。


 俺たち4人は注意深く森や、川縁などを人目につかないように注意しながら進んだ。 農家の近くを通った時、干してあった服を拝借した。

 やがて、都市とレーギアが見えてきた。 城壁に囲まれた大きな都市の中心にとがった塔が幾つか見えた。 リオナの話ではレーギアは街の中心にあるとのことだった。 真ん中の部分には透明なドーム型のシールドが張られていた。


 街の東門の近くには、駐留軍と思われるテント群があった。 街に入ろうとする人間は、軍の検問を通過しなければならなかった。 俺たちは、穀物の袋を満載した荷車をロバに引かせた農夫を手伝うように荷車を押しながら、検問所に近づいていった。 俺とリオナはマントのフードを被り、アドルは布を頭に巻いていた。


 「止まれ。 どこに行く」 兵士が農夫に尋問した。

「街の市に麦を売りに行きますだ」 農夫は答えた。

 2人の兵士が荷車を改めて、怪しい物が積まれていたり、人が隠れていないかをチェックした。 兵士が異常が無いことを確認すると、“行って良い”というような仕草で農夫を促した。 農夫が荷車を進め、俺たちがそれについていこうとすると、そばで見ていたもう一人に兵士が言った。


 「待て、後ろの者たちはお前の仲間か?」

「えっ、この人達は途中で押すのを手伝ってくれた親切な人達です」

 兵士は俺たちの前に剣を突き出すと、言った。

「フードを取れ。 お前達はどこへ行く」

 リオナはフードを取ると、言った。

「私たちは、隣村から街に住む親戚の家を訪ねるところです」

「ほう、お前以外は他国の者に見えるが」 そう言うと兵士は、ポケットから笛を取りだし思いっきり吹いた。


 笛の音が辺りに響き、テントから大勢の兵士が現れた。 俺たちはたちまち50人ほどの兵士に囲まれた。 俺たちは一般人に紛れるため、剣はレオン達に預けてきたのだった。

「あなた方は緑の王とその配下の方がたですね。 出来れば手荒なことはしたくありませんので、そちらも抵抗しないでいただきたいのですが」 指揮官と思われる男が近づいてきて言った。

「どうするつもりですか」とスウゲン。

「我々の将軍とお会いしていただきます。 おとなしく同道願いたい」

 スウゲンは俺の顔を見た。 俺は頷いた。

「承知しました」とスウゲン。

(本当に、スウゲンの言うとおりになった。 この男はどこまで先のことを読んでいるのだ)

 俺たちは馬車に乗せられ、北に向って王都を離れていった。


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