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12-1 青の使者

 リオナは夜の空を灯りも点けずに飛んでいた。 敵に見つからないようにするためだ。 敵に見つかる恐怖と真っ暗な中を飛行する恐怖で顔は引きつっていたが、必死にこらえていた。 遠くに見える微かな灯りを頼りに夜の海上をもう1時間以上飛んできたのだった。


 (何としても王に合わなければ。 何としても藍のレギオンまでたどり着かなければならない)

 次第に点々とした灯りが大きくなって街の場所が分かるようになったころ、突然空が明るくなったと思うと、上空にエイのような三角形をした物体が10体ほど浮かんでいるのが見えた。


 「クッ、待ち伏せされたか」リオナがつぶやいた。 次の瞬間、10体のエイから光の矢が放たれると、雨のようにリオナの頭上に降り注いだ。 リオナは自分が乗っているエイのような乗り物を素早く操作し矢をかわした。 しかし第2波はかわしきれず何本かを受けてしまった。

(ツゥ、やられたか) リオナの肩と背中に痛みが走った。 ボークと呼ばれる飛行物体にも被弾したため通常飛行が出来なくなった。 急激に失速すると、海面に突っ込んでしまった。 リオナはその衝撃で意識を失った。

 10体の飛行物体は周辺を照らし、しばらく捜索していたがやがて諦めたのか、飛び去っていった。


 俺は藍のレーギアで朝食をとっていた。 新鮮な焼き魚がとてもうまかった。 穏やかな海を眺めながらの食事はなおさらだった。 だがそれとは裏腹に頭に浮かんで来るのは、アンドレアスのことだった。

(統治は難しいな、何が正解なのか分からない。 しかも色々な人の色々な思惑が絡み合っているからなおさら複雑になる) とりあえずセシウスを軍の総司令に任命した。 王代理だけは固辞したので、グレアムが王代理も務めることになった。 空席になった大臣達の代わりは、グレアムに人選させている。 人選に当たっては、世襲や一族からの抜擢は認めないこと、純粋に能力のある者を登用させるように条件を付けた。


 その日の夕方、リンエイが執務室に現れた。

「カケル様、至急ご報告したいことがございます」

「何でしょう」

「実は昨夜、ベレス島の南側で漁師が海面に浮いている人を発見しました。 若い女性で怪我をしており、その怪我は事故では無く武器による攻撃と思われました」

「海賊に襲われたのではなかったのですか」

「当初私もそれを考えたのですが、今朝その者が目を覚ますと自分は青のレギオンの者だと言うのです。 そして藍の王に会わなければならないと申したそうです」

「青のレギオンですか。 その者は目的を言っていましたか」

「いいえ、『王に直接申し上げる』の一点張りです。 どうされますか、お会いになられますか。 この王都まで連れて来ております」

「分かりました、会いましょう。 今この島にいるサムライはあなただけですか」

「スウゲン殿はおられたはずです」

「ではスウゲンさんも同席するように伝えてください」

「かしこまりました」


 1時間後、王の執務室

 正式な使者かどうかも分からないし、何やらきな臭い感じがしたので、秘密裏に会われた方が良いだろうとのスウゲンの進言従い、執務室で会うことにしたのだった。


 リンエイと一緒に一人の女性が入って来た。 青みがかったショートヘアの意志の強そうなグレイの目をした若い女性だった。 怪我をしているためか動きがぎこちなかった。


 「お初にお目にかかります、私は青のレギオンの王、ミーアイ様にお仕えするリオナ・サーブと申します」

「藍のレギオンと緑のレギオンの王、カケル・ツクモです。 どうぞおかけください」 リオナが向かい側に座ると、スウゲンとリンエイは二人の脇に座った。

「カケル王にお願い申し上げます。 どうか我がレギオンをお救いください」

「それはどう言うことでしょう、現在青のレギオンは王が不在とお聞きしていましたが、王が立たれたのですか」

「約1年前、前王のギーガン王が亡くなられた後、前王から指名されたサムライのミーアイ様が王として立ちました。 しかしもう一人のサムライだったバウマンがそれを不服として、現在青のレギオンは内戦状態にあるのです。 軍の大部分を掌握しているバウマンに攻められ、ミーアイ王はレーギアにろう城中です」

「不思議なのは12王ならば自分の力でねじ伏せることが出来るのではないかと思うのですが」

「それは王が元々、軍事担当のサムライではなかったことと、自ら仲間だった者達を殺すことに躊躇されているのです。 今まで王がレーギアにこもり、膠着状態に業を煮やしたバウマンが、更に銀のレギオンに応援を求めたのです」

「それで私にどうしろと?」

「カケル王にミーアイ王を助けていただきたいのです」

(まずい、まずいぞこれは) 俺はスウゲンの顔を見た。 スウゲンは頷くと言った。

「我らがミーアイ王を助けるとは、具体的に何処まで求められておられるのでしょうか」

「藍あるいは緑の軍勢でバウマン達を排除し、王達を解放していただきたいのです」

「貴方は簡単に言いますが、これは容易ならざることですよ。 銀のレギオンが出てきていると言うことは、単純に内乱ですまずに我々と銀のレギオンの戦争にまで拡大する可能性が大です。 それに対してこんな言い方は失礼かも知れませんが、我々に何のメリットがあるのですか」とスウゲン。

「それは、これが解決すれば、青のレギオンはカケル王と同盟を結ばれるでしょう。 それはそちら側にも十分メリットになるのではありませんか」とリオナ。

「なるほど、分かりました」 スウゲンはそう言うと、俺の顔を見た。

「状況は分かりました。 これは重大事です。 緑のサムライ達とも協議する必要があります。 しばらく時間をいただきたい」と俺は言った。

「どのくらいでしょうか。 私たちにはもうあまり時間は無いのです」

「焦るお気持ちは分かりますが、事は慎重に当たらねばなりません。 とりあえずリオナ殿はお体の治療に専念されてください」とスウゲン。

「どうか、どうかカケル王、ミーアイ王をお助けください」 リオナは必死に懇願した。


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