11-3 暗殺計画
俺は藍のレーギアで政務を取っていた。 修行のために1カ月も空けていたので、決済する書類が机に山に積まれていた。 今回はユウキがこちらを見てみたいと言うことで一緒にこちらに来ていた。 俺が書類と格闘している時に、ユウキはスウゲンにレーギアや街を案内してもらっていた。 俺がこちらにいる3日間にユウキは、バウロやリンエイとも積極的に情報交換を行なっていた。 俺が溜まった書類に一区切りついて休んでいるところに、スウゲンが入ってきた。
「カケル様、ユウキ殿は傑物ですな。 お若いのに知識、機転、洞察力、並外れております」とスウゲン。
「スウゲンさんにそう言われるとユウキも喜ぶと思いますよ。 ユウキもスウゲンさんは切れ者だと言っていましたから」
「それは恐縮です。 ですが一つ気になることがございます」
「何ですか」
「彼は私と同じ臭いがします。 あっ、臭いという意味ではなく、同類の感じがするという意味です。 彼も私と同じで知らぬ間に敵を作ってしまうタイプだと思います」
「やはりそう見えますか。 私もそれは気にしているところです。 悪気はないのですが、ついストレートな物言いになってしまうのです」
「カケル様、ユウキ殿の身辺は用心なされた方が良いと思われます。 私の見るところ、緑のレギオンの内部には不満の火種がくすぶっていると思われます」
「なぜそう思うのですか」
「理由は幾つかございます。 カケル様は新しいサムライを次々臣下として加えられました。 しかもマブル族やアデル族のサムライです。 異種族に対して嫌悪感を持つ者は何処のレギオンにも一定数います。 恐らくその者達は面白くないでしょう。 特に長くレギオンに仕え、ある程度高位にある者にとっては」
「なるほど」
「そして、そのような者達にとっては、直接王に対して不満をぶつける訳にはいきませんので、不満のぶつけ先としてユウキ殿が狙われる可能性が高いと考えます」
「それは命が狙われるということですか」
「最悪は。 策略によって陥れられ、失脚を狙うということも考えられますが、それがうまくいかなければ、暗殺という手段もありえるかと」
「うーん、それはまずいな。 ありがとうございます、ユウキには注意するよう言います」
スウゲンは少し考えてから言った。
「もしかしたら、ユウキ殿は全て見通した上でやられているのかも知れません」
「どう言うことですか」
「レギオン内の膿を出そうとしているのかもしれません。 もしそうだとしても、思い通りに事が動かないことは良くあることです。 ご注意なされるのがよろしいでしょう」
アーレンの邸
「例の貴族制度実現については、見込みはどうでしょうか」とアーレン。
「王を納得させる裏付けが必要だ。 資料はどうとでも作ることは出来るし、王は世間知らずだからどうとでも説得できる。 だがあの小僧を黙らせることが出来なければ、まず無理だろう。 奴は口だけは達者だからな」とアウトス。
「やはりアイツは、邪魔だな。 排除すべきだろう」とモーリア。
「だがアイツは、王のお気に入りだ。 露骨な手段を採ればそれこそ激怒して、関わった者全て極刑になる恐れがある」とガウザー。
「何か不正に荷担していた事にして告発させよう。 証拠はなにかねつ造すれば良い」とマウセル。
「だけどアイツは、頭だけは切れるから引っかからないかも知れないわ。 別の選択肢も考えて置くべきよ」とアイレス。
「分かった、それは私の方で当たってみよう」とアーレン。
「それでは、奴の不正に関しては、私の方で準備しよう」とアウトス。
緑のレーギア、王の居室
「おい、もう少し身辺に注意しろよ。 いつ後ろから刺されるかも知れないぞ」 俺はユウキに言った。
「ははは、誰かに入れ知恵でもされたか? 俺は大丈夫だよ」
「なぜそう言えるんだ。 お前は物言いがきついから恨みを買いやすいんだよ」
「まあ、俺は俺なりに考えているから、心配するな」 ユウキはそう言うと全然取り合わなかった。
俺はユウキが帰った後、ジュリアンに話して、ある依頼をした。 ジュリアンは頷いて、出ていった。




