11-2 密会
3日後、ある商家の一室
そこには6人の人物がテーブルを囲んでいた。 正面に座っているのは若い女性だった。 その右には、太って首にまでたっぷり脂肪のついた男が座っていた。 その隣には、軍人と思われる目つきの鋭い男が、そして向かい側にはアウトス、マウセル、ガウザーが座っていた。
「皆さんお集まりですね。 良くおいでくださいました、私はこの邸の主人のアーレン・ガウサです。 この町で木材を始め手広く商いをしている者です。 こちらのお方は、皆さんご存知ですよね」
「もちろんです、前王のご息女アイレス様です。 レーギアを出られたとお聞きしましたが、どちらにお住まいなのですか」 軍人風の男が答えた。
「私は今、こちらのアーレン殿のお世話になっています。 あのカケル王は私をないがしろにして、レーギアを追い出したうえに、破廉恥にもエルム族や魔人族の女をレーギアに引き入れるなどもってのほか。 これでは私は父上の墓前に顔向け出来ません」
アイレスは橙のレギオンの戦争の後、カケル王を自分の虜にしようとしていたのだが、王は何かとレーギアを空けていることが多く、いる時にも色々理由をつけてジュリアンに取り次いでもらえなかったのだった。 そのうちにアンドレアスから兄のロレス共々レーギアを追い出されたのだった。
「確かに今のカケル王は、レギオンをないがしろにしています。 王としての自覚があまりにもなさ過ぎます。 数日前まで1月もレーギアを空けるなど前代未聞です」 軍人風の男が言った。
「まあまあ、モーリア殿も警護隊の隊長としてご苦労されていると思いますが、そう興奮せずに。 我々の思いも同じです。 我々もこのままではレギオンの先行きが危ぶまれると考えているのです」とアウトス。 ガウザーとマウセルも頷いた。
「ならば我々は同じ思いを持つ者と言うことでよろしいですかな」とアーレン。
「アーレン殿はなぜレギオンに対して憂いられているのですかな」とモーリア。
「もちろん前王の時からひいきにしていただいておりましたし、皆さんが進められている貴族制が取り入れられれば、私としては大いに領地開発に微力をお貸しする機会を得られると考えております。 それ故この提案が是非王様に採用されるように願っているのです」
「なるほど、レギオンの将来を思う気持ちは同じと言うことで良いが、それでどうしようと言うのですか」とガウザーは少し訝しげに尋ねた。
「なに、思いを同じにする者同士で、レギオンを良くするためにはどうしたら良いか話し合いたいということですよ」とアーレン。
「話しあったところで、何も変わりはしませんよ。 あの世間知らずの王にユウキの小僧がくっついて好き勝手しているうちは。 我ら旧臣達の声に耳を貸さないのだから・・・」とアウトス。
「ですから、レギオンの主導権をこちらに取り戻すにはどうせれば良いのかを話し合うのです」とアーレン。
「それは謀反を起こすと言うことですか?」とガウザー。
「謀反とは物騒なことをおっしゃいますな。 とんでもございません。 今レギオン内で好き勝手をしてレギオン内を乱している者を排除して、正しく王を導ける体制に是正しようと申しているだけです」とアーレン。
「それにはここにいる方がただけでは力不足でしょう。 もっと味方が必要です。 仮にも奴はサムライですから」とガウザー。
「そうですね、レーギア警護隊だけではなく軍の中にも同じ思いの者はいるでしょう。 そう言う者に声をかけるべきでしょう」とモーリア。
「ただし、それは慎重に行なわなければなりません。 もしこれが王やアンドレアスの耳に入れば、謀反として処罰されかねませんぞ」とアウトス。
「分かりました。 とりあえず密かに同志を集めながら、具体的な手立てを検討していきましょう。 それで如何ですか、皆様」とアイレス。
「よろしいでしょう」 一同は頷いた。