8ー6 募る不安
水晶のレギオンが出兵して3日後、緑のレーギアの会議室
「水晶のレギオンが、3日前に出発したとのことです。 兵数は5万、内訳は歩兵4万5千、騎兵3千、弓兵2千です。 率いるのは、2名のサムライで、今回は12王が直接指揮を採るという話しです」とユウキ。
「こちらは?」 アンドレアスが尋ねた。
「我がレギオンが7千、藍のレギオンが2千、マブル族が3千、エルム族が2千5百、アデル族が2千、ブルカ族が2千、総勢1万8千5百です」とユウキ。
「今回の作戦はどうするのですか」
「それについては私の方から説明します。 戦場は二つの山脈の間と森の手前のこの辺りを考えています。 開戦は恐らく20日前後かと思われます。 戦術については・・・・」セシウスが説明した。
「なるほど、神兵対策はどうするのですか?」俺は尋ねた。
「それについては、考えております。 しかしそれをより確実にするためにもう一つファウラさんに協力してもらうつもりです」とユウキ。
「はい、ユウキ殿からお聞きした件は可能だと思います。 ただし、それにはカケル様とユウキ殿の協力が必要です」とファウラ。
「分かりました、何でも言ってください」
「ではこれで行くということでよろしいでしょうか」とセシウス。
「良いだろう」アンドレアス。
「では、私の方でアドルやアビエルさんとハルについては作戦を伝えておきます。 彼らにはそのままあちらの兵達と行動を共にしてもらいます」俺が言った。
会議のあと、俺とユウキは二人で話した。
「正直なところ今回はどうなんだ?」と俺は聞いた。
「うーん、いけるとは思うんだが、幾つか不安要素がある」
「どんなところが?」
「今回もタイミングがすごく重要になってくる。 だが、藍のレギオンや他の種族の兵がこちらの考えているタイミングで動いてくれるかが心配だ。 特にアデル族なんか本当に兵を出してくるのかさえ不安だ」
「俺が心配しているのはそこだ。 味方同士なのに信頼していない。 同じレギオン内でも不信感、不安感がかなりあるようだ。 俺はこれが、兵達の士気や動きに悪影響が出ないか心配しているのだ。 恐らく今回は皆が本当に一丸とならないと勝てないと思う」
「いいか、お前がたとえそう思っていたとしても、絶対にそんなそぶりは出すなよ。 下の者は敏感に感じ取るぞ。 お前は今回も絶対に勝つという気持ちでいるんだ」
「分かった」
それから、16日間は様々な準備でレギオン挙げて慌ただしかった。 森を出た所に陣の構築、藍のレギオンの海兵部隊の移送、バウロと打ち合わせ、アドル達と兵の配置と攻撃タイミングの調整、ファウラと打ち合わせ等、考えられることは何でもやった。 街も日増しに緊張感が高まっているのが感じられた。
そして17日目には、二つのレギオンの連合軍9千は王都を出発した。 北西に行軍すること1日半進んだ森を抜けた先に陣を構えた。 陣の先に準備を進めていると、エルム族が到着した。 族長のベラスラとグラウスが鎧に身を包み挨拶に現れた。
「カケル様、お約束どおり、エルム族2千5百参陣いたしました」
「良くおいでくださいました。 感謝いたします」
「なんの、我らは戦いを好む訳ではありませんが、臆病者ではありません。 我らの力を示してご覧にいれまする」
ベラスラと作戦の確認をしていると、斥候が戻ってきて報告した。
「敵が現れました。 10キロほど先です」
「分かった、開戦は明日の早朝だな」とアンドレアス。