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7-7 対立

 バウロの屋敷で歓待を受け、かなり酒が回った頃、俺は尋ねた。

「何日か前にこの辺りで嵐があって、船が遭難したとお聞きしましたが、助かった人はおられたのですか」

「10日ほど前の嵐のことかな。 たしか島に近かったせいか、何人か助かったと聞いてはおるな。 なんだ、知り合いでも乗っていたのか?」

「いえ、そう言うわけではないのです」

「ところで、レギオンの王様がまだ決まらないのはどうしてなのですか」とファウラ。

「12王になれる者などそう簡単には現れぬわ。 かといってこのままにはしておけぬので、儂がなるしかないと考えている。 あんな口が達者なだけの奴にこのレギオンは任せられぬ」

「どなたのことをおっしゃっているのですか」

「もう一人のサムライのスウゲンと言う奴だ。 一番の新参者のくせに、口ばかり達者で、戦も姑息なだまし討ちみたいなことばかりやる。 あんなのが王になったら、このレギオンは世間からの笑いものになる。 もうあんな奴の話はヤメだ、酒がまずくなる」


 アードン島のスウゲン屋敷のジュリアンが意識を取り戻して3日が過ぎた。

「どうですか、体のほうは?」とスウゲン。

「おかげさまで、怪我もだいぶ良くなりました」 ジュリアンは確かに体の方は回復していった。 しかしまだレムの方が十分回復してはいなかった。 何度かホーリー達と念話を試みるのだったが、そのたびに頭痛が起きてうまくいかないのだった。

「妹さん達の件ですが、まだ確実なところは確認できていません。 他の島で救助された人は何人かいるようなのですが、もう少しお待ちください」

「ご配慮感謝いたします。 ところで、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「何でしょう」

「何故、新しい王様が決まらないのですか? サムライの方がたから王様になられる方がおられないのでしょうか」

「相応しい人がいないのです。 私は人望が無くて支持されていなくて。 バウロというサムライがおるのですが、何でも力で強引に進めようとするので、彼が王になったら、レギオンは崩壊するでしょう。 もう一人前王の養女でリンエイというサムライがいるのですが。 彼女は人望もあるので、彼女がなってくれれば良いと考えているのですが」

「リンエイさんは何故王になられないのですか?」

「それは前王の死が、自分のせいだと責任を感じているからです。 3年前、黒のレギオンともめた時に、王がリンエイを庇われて負傷しました。 王の死はその傷とは直接的には関係ないのですが、彼女はその傷が影響して王が亡くなられたと思っているのです。 それで自分は王には相応しくないと。 あっ、私は何故こんなことを外部の人に話してしまったのだろう」

「それでなかなか次の王が決まらないのですね」

「ところでジュリアンさん、今度はこちらからの質問です。 あなたは何者ですか」

「はい・・・、私は旅の冒険者で・・・」

「嘘がヘタですね」 スウゲンは笑った。

「女3人の冒険者なんて怪し過ぎますね。 それにレギオンのことを聞いてきたし、冒険者のような粗野な感じもない」

「では、何だとおっしゃるのでしょうか」

「そうですね、天聖球を狙った冒険者では無さそうですし、ほかのレギオンからの間者と言うところでしょうかね。 それで送り込んできたのは、橙や黒はあり得ないので、可能性が高いのは緑でしょうかね」

「それで、もしもそうだったとしたら、どうされるのですか」 ジュリアンの顔が険しくなった。

「どうもしません」

「えっ」

「だって、今お話ししたようなことは、この辺では誰もが知っていることです。 それに、今このレギオンは王が不在と言うことで他から狙われている状況です。 緑のレギオンも現状を確認したいという程度でしょう、もし王が決まったのなら同盟を結びたいと考えているのかも知れません。 そこで緑の間者を殺害したりしたら、よけいな敵をつくることになってしまいますからね」

「・・・・・」

「ですから心配しないでください」 スウゲンは笑った。

(この男、かなりの切れ者だぞ。 すべてお見通しだ)


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