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7-3 バレン

 王都を出て4日目の夕方、丘の上からオレンジ色になりつつある海と、港に広がる街並みが見えた。 それ程大きな街とは言えないが、ここはまだ緑のレギオンのテリトリー内であった。 旅館はグレンが目立つため、レーギアに出入りしている商人の館に泊めてもらうことになっていた。

 「カケル様、ようこそ我が館へおいでくださいました」 主人が太った体をゆすりながら、出迎えてくれた。

「お世話になります」 俺は主人に礼を述べた。 その後、旅の埃を洗い流しさっぱりしたところで、主人が用意した新鮮な魚介類をふんだんに使用した料理に舌鼓をうった。

「ところでカケル様、今回はどのような目的でこちらへおいでになられたのですか?」と主人。

「ええ、我がレギオンも色々物入りでして、それでこのバレンをもっと開発して貿易と物流を活発化したいと考えています。 私はまだレギオン内を良く知らないので、自分の目で見て回っているのです」

「それはそれは、是非そうしていただければ我々もありがたいです。 よろしければ、明日私どもで街中をご案内させましょう」

「いえいえ、それには及びません。 今回はなるべく表沙汰にしたくないので・・・」 それで主人が何かを察したのか、それ以上は言ってこなくなった。


 「ところで、貿易の方はどうですか?」

「それなのですが、最近はあまり良くないですね。 藍のレギオンの王が亡くなられてから、レギオンが機能していないため、海賊が頻繁に出るようになっているのです。 荷主と船主が金を出し合い、傭兵を雇ったりしている船もありますが、荷主達は割に合わないとぼやいております」

「レギオンの状況はどうなのですか」

「私も詳しくは知らないのですが、噂によると残されたサムライ達が次の王の座を巡って、争っているということです」

「なるほど、では安定的に貿易を続けるには藍のレギオンの動向に影響されるということですね」

「そうですね、早く新しい王が立たれて、以前のようにこの海を制してもらわないと海賊がのさばり放題ですので」


 俺は酔い覚ましに、一人庭に出てきた。 南の方のせいか風も蒸し暑かった。 すると庭の隅の方で何かが一瞬光るのが見えた。 何だろうと思い近づいた時、木の陰から声が聞こえた。

「カケル様、ザウフェルです。 こちらを見ずにそのままお聞きください」

「3人はまだ見つかりません。 ただ3人が乗った船が嵐に遭って難破したようです。 多くの人が海に投げ出されたとのことですが、島に近かったこともあり助かった人も多いとのことです。 それとレギオンの状況ですが、スウゲン、バウロ、リンエイの元サムライが、レーギアのある本島の西、南、東の島を本拠として3千から5千の兵力を擁して対立しているようです。 天聖球については・・・」 ザウフェルがそこまで言った時、後ろから声がかかった。

「何をなさっておられるのですか」 ファウラだった。

「あ、ちょっと飲み過ぎたので、風に当たっていたのです」 その時には木の陰には、誰もいなかった。

「カケル様は、お酒に強くないのですから、飲み過ぎないでくださいね」

「ハイハイ、分りました。 そうだこれを・・・」 そう言うと、俺は右手の腕輪をはずしファウラの右手にはめてやった。

「私にいただけるのですか」

「これは、危険が迫ると光って知らせてくれるのです。 これから先はいつ何が起きるか知れませんので、持っていてください」

「カケル様、私にそのようなお気遣いを。 大切にいたしますわ」


 翌日、俺たちは港に向い、藍のレギオンの本拠地があるガルソン島へ向う船を探した。 俺はジュリアン達のことが気になった。 ザウフェルの話しのとおりだとすれば、遭難した可能性が高い。 バレンに来る途中でも、何度か念話を試みたが通じなかった。 あの3人が簡単に死ぬとは思えないが、気が急いた。

 俺たちは港に停泊している船を回り、午後にガルソン島へ向う船を見つけ、レオンが乗れるように船長と話をつけてくれた。 騎竜は昨夜の商人宅で預かってもらうことになった。 主人は何も聞かず二つ返事で引き受けてくれたのだった。 問題は二つあった。 アビエルのガルはさすがに商人宅で預かるのは無理だった。 だがアビエルは事もなげに言った。

「ガル、チビガルじゃないと連れていかないよ」 そうアビエルが言うと、「ガウ」と吼えたかと思うとガルの体が急速に縮みだし、柴犬くらいの可愛い子犬のようになった。 ファウラが頭をなでてやると、ガルもファウラの顔をなめた。


 もう一つの方は、簡単ではなかった。 街で檻を調達してきて、グレンをそれに入れて船に載せるというファウラの案だったが、これにはグレンが猛反発したからだった。

「ボク、コレキライ。 イヤ」

「グレン、これしか船に乗れる方法がないんだよ。 我慢してくれよ」

「ボク、ソラトブ」

「だめだ、目立ちすぎる、それに弓で狙われるぞ」

「イ・ヤ・ダー」 説得に1時間かかった。


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